バックナンバー(1998.4)


 

(1998.4.1掲載)

トイレが悪夢のごとく……

 月曜日に関東に帰ってきてね、やっぱり相変わらず痛くて眠くて。背中張ってるって言ったでしょ、あれが痛いんだ。ついつい明け方寝返り打つと目が覚めちゃうんだ。だから最近時差ボケです。

 先週の金曜日なんて、目が覚めたのが12時59分、3時何分だったかな・・・とにかく5回ぐらい夜中に目が覚めてるんだ。日曜日の朝はゆっくり寝れたんだけど、月曜日は1回目に目が覚めたのが4時、次が4時40分、5時10分ぐらい・・・そんな感じで4、5回目が覚めてる。だから寝てるのか寝てないのかわかんないんだよね。もう、どうしよう!って感じだよ。

 今週は市原です。太平洋クラブ市原は、この前練習ラウンドに1回行ったんだけど体調悪くてね。ハーフでやめて帰ってきたんだ。

 実はあそこのトイレね、壊れてるんだ(苦笑) 行った時、2カ所壊れてた。トイレ行こうと思ったらね、1つはつまってるし、1つはぜんぜん流してないんだ。もうどこに入っていいかわかんなくなっちゃってさ(苦笑)

 で終わってフロントに言ったんだけどさ、ひょっとしたら僕がやったと思われちゃったんじゃないかなって心配なんだけどね。ただまあ2カ所だから、そうは思われないと思うんだけど。

 コース自体は立派だし、食堂もおいしかったし、そういう点ではいいんだけど、いかんせんトイレルームだけが、未だにこう悪夢のごとくイメージがばーーーと出てくるんだよね。

 今週は自宅から行くのと、朝早い時は向こうに泊まりとかいろいろだね。やっぱり渋滞の可能性があるし、まして高速を使うっていうのは怖いよね。事故で通行止めになったら棄権だしね。そういう点では1時間越えるところっていうのは怖すぎるね。

 同じ1時間でも田舎の一本道みたいなところをだーーと走ってくようなところとかはいいんだけど、こう曲がって止まって曲がって曲がって曲がって止まって曲がって止まってとか、そういう感じで1時間行くのはつらいね。

 今週観戦に来る人いるかな? でも、市原だったら茨城のほうがいいよ。茨城おいで、茨城。絶対茨城のほうがいいよ。まあ両方来てもらうのがいちばんだけど(笑)

 でね、ゴルフ見に来ようと思ったら、朝早起きしなかったらダメだよ。やっぱり朝早く起きて、練習場でいろんなプロの練習風景を見て、まずそこから見ないとね。

 プロがこの時間だからそのぐらいに行けばいいやっていう、そういう考え方はね、スタート時間の10分前にゴルフ場に着いて、それでコーヒー飲んでスタートしてくのと同じようなもんだからね。


(1998.4.2掲載)

平均的なミニツアー

 トミーチャレンジのホームページオープンしましたね。いい機会だから、ミニツアーについてちょっと話をしてみます。

 基本的に今のミニツアーっていうのは、全部合わせると年間60試合ぐらいある。ものすごくある。でやっぱりクリエイトされてないところ、要するにクォリティの低いところっていうのはやっぱりダメなわけ。かといってクォリティが高いとか、自分達が出たいっていう試合を選んでいってもお金がかかるんだね。

 だいたい平均的なミニツアーっていうのはエントリーフィが3万円。でその下が1万円。3万円で例えば140人集めたとして、もらえるのが25%ぐらい。全体の25%ぐらい賞金が出るわけ。で1万円のエントリーフィーで140人ぐらい集まって、優勝が20万円で、あとは20%とか25%しか賞金が出ない。そうなると残りの75%はもうお金を捨ててるようなもんだよね。

 出場する人たちというのは、実戦を経験できればっていうことでミニツアーっていうのには出たい。で、出るからにはやっぱりいい経験をしたいと。でも60試合もあって、毎回毎回行くたびに3万円近くかかるとなると、どんなに切り詰めてもエントリーフィが3万かかるところに出たら、実際は4、5万かかっちゃうわけだよね。だからほとんど赤になる。

 そうすると選手側には負担がかかるわけだ。試合はたくさんあっても試合に出るとお金がかかる。結局人気があるところにしか集まらない。人気がないところはつぶれてく。まあそこまではオーバーだけど。

 で出てみると、運営サイドがどれだけ明確にっていうか、透明感があって、しかもプレーヤーの立場に立ってやってる試合かっていうのを感じるんだよね。

 例えば100人集まって、3万円エントリーフィをもらえば総額300万円になるわけだね。300万円だから賞金総額が300万円あってほしいわけだ。もし出る選手として自分が考えるとね。スタート表見れば何人出るかわかるわけだよ。出るのに3万円かかってるんだから、そうすると300万集まってる、だったら300万円の賞金があってほしいんだけど、現実にはそれはないわけ。

 なぜかっていうとエントリーフィで3万円集めて300万円だけど、事務所の運営費なんかがかかるわけだから、その300万円から従業員の給料あるいは事務費諸経費を考えると、総額が200万円になっちゃう。あるいは250万円になっちゃう。

 まあそういうふうなところで、上の賞金だけ厚くして、下をぐっと切り詰めちゃうと、なんかこう腑に落ちないところがあるんだね。


(1998.4.3掲載)

賞金を出す割合

 ミニツアーの話続けます。昨日腑に落ちないって書いたんだけど、腑に落ちないっていうか、それでほんとにいいんだろうかという感じかな。

 僕の考え方っていうのは、選手が出したエントリーフィから出す賞金額というのは、全体人数に対してきちんと出ないといけないと思うんだ。基本的には最低実施人数みたいなのは持ってるんだけど、少なくなってしまえば当然、その賞金額も下がってくる。

 だから逆に言えば、人数が多くなった場合にはある程度賞金額も増えてくっていう感じにしないといけないよね。でうちの場合はそういうふうな形式を取ってるから、そういう点ではお金の出入りの透明感っていうのは非常に高い。だから出場する側としても納得がいくんだね。しかもうちは30%以上出すし。

 まずツアー概要を見て、優勝いくらっていうのは惹きつける物ではあるけれど、実際にどこまでが自分が稼げるラインかっていうのを見た時に、下が厚いほうが入りやすい。試合によっては上だけ100万とかいって、下がこちょこちょっというのがある。

 200人いたら、優勝とかにばんとあげちゃうから、その下は15位とか20位とかぐらいまでで、ちょっとしか取れない。うちは120人いた場合で30位とか40位とかまで出る。基本的には3分の1っていうラインが1つの目安になると思ってるんだ。3分の1に出した分が戻ってくるという形であれば、いいかなと。

 現実にはエントリーフィが戻ってきてもプレーフィがかかってれば、食事や宿泊がかかるから実際にはマイナスになるんだけどね。結局1万円のエントリーフィを払ったとしたら、やっぱり3万円稼がなきゃとんとんにはならないね。

 アメリカのミニツアーなんかを見るとエントリーに300ドル払って、優勝が1000ドルとかそういうレベルなんだ。だからその倍率のすごさっていうのは、日本のほうがすばらしいんだ。


(1998.4.4掲載)

賞金は次の元手

 ミニツアーはアメリカより日本のほうがすばらしい、要するにめぐまれているってことなんだけど、1万円のエントリーフィーを払って、それが何十万になって返ってくるっていうのは、言い換えれば万馬券はオーバーとしても、1万円が30倍にも40倍にもなっちゃうわけだね。

 だから300ドル出して、まあだいたい3万円ちょっと出して、戻ってくるのが10万円ちょっと、12万円ぐらいかな。そういうふうに考えると倍率ってのは知れてるよね。4、5倍にしかならないでしょ。それで食べてくことはできないよね。でもアメリカではその金額で食べてくことができる。

 ほんとはミニツアーで生活できちゃおかしい。これを元手にいこうっていうような、ミニツアーで稼いで、それを元手に来年のアジアンサーキットに行ってこようとか、オメガツアーに行こうとか、あるいは予選会を絶対通りたいから集中的にやろうとか、練習代にしようとか、トレーニングジムに行こうとか、そういう軍資金にできればいいんであって、そこそこ生活が成り立ってしまうと、ミニツアーをやってく意味ってのがないと思う。ちょっと違うよね。本末転倒っていうか。だからトミーチャレンジは、ほんとに登竜門になってくれればなぁって思ってるんだ。

 まあ日本の場合、最初の立ち上がりがちょっとねぇ。いきなり優勝賞金100万から始まったからね。それがちょっとまずかったかなとは思うんだけど。

 いまは関東だけで7ツアー。各地区で5試合から10試合。だから最近はミニツアーとしては賞金としては落ちついてきたんだ。一時期ミニツアーっていうと百何十人出て、優勝が100万円。で2位3位とかにばーとお金が出て、20位以下っていうとゼロー!っていう感じなんだ。要するに前に書いた、上が厚くて下が少ないっていうね。

 でも最近は優勝賞金が20万とか30万とか50万ぐらいのやつが増えてきたから、エントリーフィを払って得られるお金としては妥当なところになってきたかなって気はするね。

 しかし、運営してる側、要するにミニツアー開催してて家を建てちゃったやつがいる。これはこれでおかしいと思うんだ、僕は。


(1998.4.5掲載)

サクラチル

 いやぁ〜、ミニツアーの話してる間に・・・散りました。桜が散っちゃいました。予選落ちしちゃいました。

 2日目はアウトスタートで、1番ロングでバーディ取れなかったんだよね、惜しかったんだけど。で、2番取れず、3番はこれも惜しかった。4番がちょっとピンチだったんだけどパーでしのいで、5番またチャンスだったんだけど、また惜しくもはずれて。

 で6番のショートはピンまで186ヤードぐらいだったかな。それを6番アイアンでぽーんと打って、本人としては自信持って見てたんだ。6番は池越えのショートホールなんだけど、ちょうど池をちょっと越えたところにぽっと落ちて、後ろに跳ねてに入っちゃった。

 オナーは水巻選手だったんだけど、彼が6番アイアンでぽーんと打って、まあちょっと当たりがそんなによくなかったんだけど、ピンの手前6メートルぐらいに乗っかったんだ。それを見てて、じゃあ自分は6番アイアンで普通に打てばちょうどいい感じだなと判断したわけだ。

 風は左からのまあサイド、ややフォローが入るかなという感じで、まあ条件的には非常に余裕のあるところだったんだけど、打って、ばんと球が出た時に、あっこの球だったらいいぞと思ったのね。でピンをオーバーするとすごい下りの難しいパットが残るから、ますます、あっこれだったらピンの下目につくからいいかなぁなんて思って見てたんだ。

 でティーショットだからティーを拾って、キャディのほうに向って歩きかけて、まあボールを追いながら見てたんだけど、ボールがぽん、あれ?なんであんなところに落ちるんだ? で後ろに戻ってぽちゃっ。あららぁ〜って。

 でもラテラルウォーターハザードだから、ピンに近づかなければ池を越えたグリーン側でアプローチできるかなぁって行ってみたら、跡がないんだ、落ちた跡が。落ちた跡がないってことは、はっきりしてないってことは、池の中に落ちた、赤い線を越えてないって判断するしかないよね。で、池の手前に戻って、サードショット打ち直し。

 ドロップしたその第3打目をピンの奧1.5メートルぐらいにぽんと落としたら、バックスピンですーーと戻って、4、5メートルかなぁ、上りのパットになったんだ。パッティングはずっといいから、なんとかここをボギーでしのいでいこうと思って、ファーストパットちょっと強めに打ったら、それが1メートルぐらいオーバーして、その返しはずして、しかもそのまた返しもはずして・・・4パットのなんと7つなんだよ。

 理屈では、理屈っていうか、頭の中では、ここから気を取り直してがんばれば、まだなんとか4オーバーだし、予選はだいたい2オーバーなら通るから、2つぐらいバーディ取れるじゃないかっていう気持ちにならなきゃいけないんだけど・・・ダメだったねぇ。なんかその日は、笑う門には福来るじゃなくて、怒る門には鬼来るだったよ。


(1998.4.6掲載)

1回切れてしまうと……

 今回の予選落ちは自分でも情けなかったね。7番のロングはきれいに3パットだよ。もう切れてしまった凧のような感じで。

 で7番3パットしてボギーしたときに、あぁこんなことしてたらパッティング悪くなるぞ、せっかくよくなってきたパッティング悪くなるぞ、ということでパッティングだけなんとかしたいなって、要するにもうパッティングだけは崩したくないと思ったんだ。

 ショットとかそういうものも確かに張りがなくなってるけど、もう張りっていうか、ねぇ、ほんとに無気力になるかけてるんだけど、パッティングを一緒にこのまま引きずってっちゃダメだと思ったんだけどねぇ。

 8番9番・・・9番のバーディチャンス、これがまた入んないんだ。でもって10番に来た時にはもう5オーバーだった。ロングホールでほんとは刻みたいんだけど、ドライバードライバーでいって、40〜50ヤード手前のバンカーに入って、そこからクリーンショットだよ。でピンは右手前だから止まりゃあしないわねぇ(苦笑)

 で奧行って、奧のカラーからパターで打ったけど、速く見えるんだけど速くなかったね。で決定的な3パットでここで6オーバーになっちゃった。

 もうなんていうかな、ほんとね、もうほんとお酒で酔ってたらね、自殺しちゃうね。ほんとにもう情けなかった、自分自身で自分自身が。

 でまあその後2つバーディ取って、4オーバーまで戻って、あと15、16、17、18でなんとか2つ取ればと思ったけど、1回もう切れてしまうと、やっぱ神様ってのは褒美はくれないね。やっぱり戒めというかね。ほんとにショックだった。

 今年はオフの間、課題をしっかり持って、その中でやってきて、それなりに自分でパッティングなりショットなり、いろんなもんをつかんで出てきたんだけどね。それが自分自身の未熟さによってつなげられないっていうのかなぁ。もう何年プロやってんだって思っちゃうよね。何年プロやってればお前はこういう、少なくとも精神的なヘマをすることがなくなるんだって思ったんだけどね。

 見に来てくれてる人にも悪いなぁって思うんだけど、なんかやっぱり自分の業の深さっていうか、人間のこう、人間っていうよりも自分自身の醜さっていうものをほんと感じたね、今回は。


(1998.4.7掲載)

中島プロ頼みますよ、ほんとに

 デサントの2日目はまずまずの天気だった。でも、初日はほんとに寒かったよね、冬みたいな天気の中でね。その中でよくがんばったけどねぇ。やっぱりそれを活かせなかったかなぁ。2日目のほうが条件はほんとにやさしかったんだけどね。

 ラウンドの中ではやっぱりミスっていうのは、1日のうちに2回や3回必ずあるわけだよね。だからそのミスを自分がどう受けるか、どう捉えるかによって、その後の結果っていうのはほんとに変わってくるよね。

 そのミスした後に、崩れるってことを取るのも自分だし、立ち直るってことを取るのも自分だからね。なんで自分はその崩れるほうを取ってしまったんだろうっていう気持ちしかないね。それはまあいろいろ考えてみると、思い当たる節もあるんだけど。

 今回初めてキャディとしてデビューした研修生もね、ほんと一生懸命に彼は彼なりにやってるんだけど、そこで彼にもすまんなぁっていう気持ちしかないね。まあそんなこと直接は言わないけど(苦笑)

 今年は開幕ダッシュしようっていう気持ちが非常に強かったけど、今まだ4戦だけど、この4戦の中でやっぱり優勝争いっていうのをしたかったね。そういう点でやっぱり、そういう気持ちを自分自身の失敗で裏切っちゃったから、だから必要以上に自分自身で怒ってしまったっていうか、そういう部分もあったんだ。

 ほんとに自分自身を楽にして、楽にしてっていうのはだらけたっていうんじゃなくて、もう少し自由にして、ゲームをプランニングしてければいいんだけどね。

 この後は、今週はマスターズウィークで休みでしょ。テレビでも見て、朝早起きをして、次はつるや、キリン、中日クラウンズ、フジサンケイ、日本プロまで連ちゃん。でペプシはたぶん今年出ないね。でギャランとうきゅうに出て、でよみうりがちょっとわかんない。でミズノ、フィランスロピー広島はまだちょっとわかんないな。

 今日のトミーチャレンジ第1戦が終わったら、また温泉でも行ってこようかと思ってるんだ。とか言いつつまた練習始めちゃうんだよなぁ(苦笑)

 ほんとにいつになったら優勝争いしてくれるんだろうねぇ、ほんとに。中島プロ頼みますよ、ほんとにって感じだよねぇ(苦笑)

 まあ、今回は重々反省して立ち直りましょう。でもいつまでも落ち込んでられないから、まあとにかくまたがんばるよ。


(1998.4.8掲載)

頼むよー!

 いよいよマスターズウィークだねぇ。なんだか日本チーム2人とも心配でしょうがないねぇ、こないだのTPCなんか見てると。どうなっちゃってるんだろうね、あの2人。なんか丸ちゃんも発言が急に弱気になっちゃって、もう、頼むよー!って感じだよ。

 TPCといえば、直道が2日目までよかったのに落ちちゃったよね。直道の場合、やっぱり自分自身でプレッシャーかけてっちゃうからねぇ。ただ弁解するわけじゃないけど、自分なんかも向こうに行って優勝争いした時って、やっぱり背負うもんが大きいんだ。

 やはり日本の期待っていうのが、やっぱり深層心理の中にあるから、それが余分な力を入れさせてしまうっていうところになっちゃうんだね。

 またその他に、同じゴルフなんだから、道具だってボールだって同じなんだし、ルールだって一緒なんだからっていうふうに思うけど、やっぱどう見ても、例えばこないだのTPC見たかどうかわかんないけど、ああやって池が多いコースであっても、アメリカ人の若い選手達ってのは日常茶飯事ああいうとこでプレーしたり、あるいはミニツアーがあったり、あるいは学生の試合があったり、あるいはクラブ競技があったりして、そういうところで育ってくんだね。

 ところが日本選手が育つフィールドっていうのは、日本の中であれだけの池を配置したコースってどこにある? 探すのが苦労するぐらいだよね。だから結局はああいうものに視覚的にもうなじんでないところで育ってるから、池というものがいつまで経っても怖くなっちゃうわけだね。

 去年、丸が全米プロで20何位に入った。ウィングルフットってところで、ほとんど池に関係なかったところが大きいと思うんだ。だからそういう点で、今回のTPCで池がすごくやはり気になったと思うんだよ。でもマスターズってのはTPC以上に池が気になるところだからね。だからそういう点で、今回のTPCの失敗っていうのが、悪いほうに影響しなきゃいいなって気がするんだ。


(1998.4.9掲載)

キャデラックの新車

 マスターズの時の宿舎は、だいたいみんな似たり寄ったりだね。あまり日本とそう違うものじゃない。

 だけど、道路の中央ってのがちょっと違ってるんだ。日本と違って中央分離帯ってのが走れる。中央分離帯ってのがなくて、要するに中央は黄色い線で区切られてるだけ。で左折する車はそこに入ってから左折してく。

 普通は中央分離帯があることで乗り越えられないでしょ。でも向こうは大きなスーパーマーケットとかそういうところあるから、そういうところから出てくる時に中央分離帯がなくて見通しが左右よければ、その中央分離帯が水平で道路とのでこぼこがなければ、すっと横切れるよね。そういう意味を兼ねても、真ん中っていうのが、車が通れるようになってるんだ、中央分離帯のところが。

 で、またその中央というのは、救急車とかパトカーとかが走るためにもでこぼこがないほうがいいんだね。だからそこは普通の一般車は走っちゃいけないことになってる。でパトカー、救急車、あるいは左折して、アメリカは右側通行だから左折していく時にそこを通っていく。あるいはモールとか、大きな駐車場から出てくる時に左折して向こう側に行く時に、その中央分離帯を越えていくという感じだね。

 ところがマスターズの時はちょっと違うんだ。出場する選手はマスターズのオフィシャルカーっていうのを借りれるのね。キャデラックの真っ白な新車。真っ白の新車を借りられるんだ、4ドアの。

 日本で言うと・・・クラウンとか、まあ、クラウンのロイヤルサルーンクラスじゃないかな。イメージとしては。それの真っ白。真っ白のクラウンの新車。ロイヤルサルーンの真っ白い車で、そこにマスターズっていうステッカーが貼ってある車を、選手1人1台ずつ借りられるっていう想像してみて。

 で選手だけじゃなく、ボランティア達の車があるから、だいたい400〜500台は車が用意されてるんだよね。すごいんだこれがまた。規模がすごい。400〜500台の新車が毎年毎年マスターズでは出ていくわけだからね。でそのマスターズのオフィシャルカーに乗っていれば、その中央分離帯を走っていっていいことになってるんだ。

 試合開催中はオーガスタへの道はすっごい渋滞なんだ。何キロっていう渋滞、もう1キロとか2キロとかいう渋滞。高速道路の出口まで2キロっていう表示があるでしょ。あのぐらいのイメージだね。

 でその2キロぐらいの渋滞、ずーーーと渋滞している中を、中央分離帯を前照灯、ライトをつけて、ずーと走っていっていいんだ、オフィシャルカーに乗ってる選手は。すごいでしょ。渋滞をわざわざ待ってないの。

 それもそこをぱーと走っていくと、警察の人がすぐ誘導してくれるっていうか、他の車を止めて、さーと通してくれてねぇ、ほんとすごいよあれは(笑)


(1998.4.10掲載)

飛行機が飛ばない訳

 マスターズというのはもう町中っていうか、町じゃなくてもう、国そのものが応援するっていう感じだね。

 昨日のオフィシャルカーや優先して走れるという話にしてもそうなのね。要するに選手達が予定時間っていうものを簡単に組みやすいようにしてるわけ。

 例えばスタート時間の何分前に着いて、どのぐらいの練習をしてくかっていうのはもう、各々みんなスケジュールができてるわけだね。ところが2キロの渋滞によって、30分、40分余計にかかることによって、ぎりぎりになってしまったり、あるいは間が保たなくなってしまったり、そういう誤差が出てきてしまうわけじゃない。

 だからそれをなくすために、だいたい予定通りになるように、そういう特別措置っていうかな、そういうことを認めてるわけだね。うん、これはすごいことだよ、ほんとに。

 応援といえば、例えば飛行機なんかも出ないしね。1986年の時に僕が出た時に、たまたまニクラスが優勝して僕が8位だった年でよーく覚えてるんだけど、この年はニクラスが最後の最後まで優勝争いを競ってた時だったんだ。

 で僕らは日曜日そのまま泊まるから別にどうってことないんだけど、日曜日のうちに帰るビジネスマンが多くいるわけだね。最終日の最終ホールを待たずに帰らなきゃいけない人もたくさんいるわけ。でオーガスタの飛行場から飛行機が飛ばないと。ニクラスが競ってるから。

 もう予定を30分過ぎても飛ばないんだ。最終的に僕が聞いた話によると、1時間過ぎてから飛んでったんだって。もう満席なんだよ。でも誰も飛べとは言わないし、飛行機の機長そのものも飛ぼうとしないわけ。

 で「たった今、ニクラスの優勝が決まりました」っていうところで大歓声と大拍手。もうみんな喜びに満ち溢れて飛んで帰ってったらしいよ。誰もその1時間遅れることに対して文句言わないんだからねぇ。そういうところが、やっぱりマスターズだよね。

 アメリカの知り合いがニューヨークに小さい頃から住んでるんだ。僕の仲のいい知り合いなんだけど、その人からその話を聞いてね。こんなことが今日オーガスタ空港であったんですよって。へぇ〜すごいなぁって。

 偶々その飛行機に乗ってる人が、その彼の知り合いだったんだよ。だからリアルなんだってその話が。もうみんなほんとに大歓声なんだって。でラジオ放送っていうか、もうテレビ放送も機内で流すんだって。そこまでするとやっぱり試合っていうのは燃え上がるよねぇ。


(1998.4.11掲載)

2人ともがんばってるね

 いやぁ、マスターズ、すごかったね、なんか3時50分のスタートだってね。ほんとに丸山もかわいそうだったね、あれは。でもほんと初出場の良さを出してるよね。まあ僕なんか、初出場の時はぜんぜんあんなゴルフできなかったから、やっぱり偉いなっていうか、よくやってるなっていう感じはするけどね。

 だから後は63ホール目までやっぱりいい位置で行って、残りの9ホールだねぇ。やっぱりメジャーっていうのはもう最後のバックナインだから。これが言い換えればトーナメントだから。

 それまではもう序曲。要するにプロローグというか、もう完全にそれまではスタッフというか、俳優っていうか、全部の筋書きをこうクライマックスに持ってくまでの整理整頓だからね。まあそこまで求めるのはちょっと酷かも知れないけどね。

 これ書いてる今頃ちょうど丸はサスペンデッドの残りが終わった頃だろうね。プレーし終わった頃じゃないかな。でまあ、スタートの組み替えをしてと。2日目もひょっとしたらホールアウトできるかどうかわからないね。当然遅れるだろうからね、予定よりは。でまた風が吹くなんて言ってたしね。

 ジャンボの3オーバーというのも、やはり苦手なアウトで2オーバー打ったけど、後半のあの風、特にジャンボが回った頃は突風だよ。ものすごい強さの風の中、あの中で3オーバーっていうのは、よくこらえたと思うよ。

 特に後半ピンチの連続だったよね。17番18番ぐらいだったよね。ほっとバーディを狙えるかなっていう状況だったのは。もう16番もピンチ、もうほんとに15番だってたいへんだったし、14番もそうだし、13番だってたいへんだったし。もうどこ見てもたいへんなホールばっかりだったよ。

 ブラウン管で見れば、そのたった1メートルぐらいのパーパットだけど、あそこの1メートルのパーパットっていうのは、普通のコースの、普通のトーナメントの1メートルとはわけが違うんだから。その中でやっぱり3オーバーで回って、なんとか2日目に望みをつないだっていうのは偉かったね。

 ただ、1つだけ助かったことっていうのは、やはり今年は雨が多かったってことと、また前夜に雨が降ったってこと。やっぱりその分グリーンが相当遅かったね。だからグリーンが例年通り速かったら、もうアンダーパーは1人もいなかったと思うよ。まずグリーンの上でボールが止まらないんじゃないかな。

 でもたいがいあんだけの風が吹くっていうのは、雨の降った後なんだ。ああいう強い風が吹くのは。だからまあ止まることは止まるんだけど、2日目からまた変わるから、どうなるんだろうなぁ〜(笑)

 いやぁほんとにすごいや。2日目も早起きして見なきゃ。


(1998.4.12掲載)

精神的疲労が取れなかったね

 やっちゃったねぇ丸山。まあでもサスペンデッドの残りの16、18とボギーボギー。うーん、これが痛いねぇ。やっぱり、初日のプレーはよかったと思うんだ。まあある意味で彼らふうに言えば、ゾーンに入ってプレーできてたわけだし、そういう点ではよかったよね。

 だけどまあ、いかんせんサスペンデッドになったのが夜の8時ぐらいだと思うんだね。でまあ8時からそこのその場でプレー続行不可能ということになったと。7時半か8時かわからないけど、だいたいそのへんだよね。7時半から8時の間にサスペンデッド決定されて、15番ホールアウトで帰ったわけだ。

 でもね初出場で、あんだけの強風の中で、それでなくても難しいマスターズの初出場で15番までナイスプレーしたわけだ。でその風の中で、疲れ切って、15番終わって宿舎に帰って、夕飯食べ終わって、なんだかんだでそうだね、帰ってシャワー浴びてご飯食べて10時はとっくに過ぎるわね。まあ11時だ。

 そうするとやっぱり、目に見えない精神的疲労っていうのがすっごく残ってたはずだよね。だから本来はホールアウトできて、仮に2時でもスタートいいや、2時でもあの風でもいいわ。でホールアウトして翌日、イーブンパーのままホールアウトすれば、スタートがゆっくりだね。まあたぶん1時とか2時とかいうスタートになるよね。そうすると精神的疲労が取れる時間はあるわけだよね。

 ところが精神的疲労は取れない。まあ肉体的疲労っていうのは誰が見ても、まあ同業者とか専門家が見れば、彼疲れてるなってのはわかるわけだよ。でも精神的疲労は見えないんだよね。だからよく言うじゃない、心の傷はどうたらこうたらと。

 要するに心の傷は人に見えるもんじゃないから直るのに時間がかかるとか言うけど、彼自身がやっぱり8時近くまでプレーして、くたくたになって、宿舎に帰ってシャワー浴びて、で休んで、で次の日の朝7時半にはプレーを再開しなければいけないわけだね。7時か7時半には。これは取れなかったね、精神的疲労がね。

 でやっぱり前日の、難しい難しいっていう風の中でこらえてこらえて、難しいっていう意識の中でプレーしていくその難しさってのを引きずってっちゃったっていうのかな。要するに区切りがつかなかった。

 ある意味では一般の人達が仕事をするよね。サラリーマンの人達が。でどうしても今日中に仕上げなければいけない仕事がある。その仕事を今日中に仕上げなければいけないんだっていう気持ちで出てくわけだよね。

 1日18ホールずつ消化していって、4日間の72ホールの蓄積で勝負が決まるわけだけど、18ホールっていうもう目に見えない、長年培ってきた1日の仕事の量ってのがあって、それをやらなきゃいけない今日の仕事を残しちゃった。そのまま帰ってしまった。

 要するに残務感ていうのかな、要するに残った仕事の量があるのに帰らなければいけない。しかもそれはヘビーな仕事だし、くたくたにならなければいけない。くたくたになるまでやって、しかもまだ仕事が残ってた。で次の日帰って、さあ机の上に、彼で言えば16番のティーに立った時に、やり残した昨日の目に見えないイメージの悪さっていうのかな、引きずらなくてもいいイメージを引きずってしまったっていうか。それが16、18のボギーボギーにつながったんだろうね。

 結果的にそれがそのまま次の日のプレーに悪い影響としてつながってしまったっていうのかなぁ。そんな感じだったね。


(1998.4.13掲載)

打たなくていい2オーバーだった

 昨日の丸山の話の続きだけど、やっぱり初日がどんなにつらい状況であっても、16、17、18の残りの3つのうち、1つボギーを打って1オーバーでもまあいいや、そうやって1日を終えられた人間と終えられなかった人間、その差ってのはけっこうあると思うね。

 で彼は特に初出場だからね。またアメリカのサスペンデッドの多さ。まあ直道君あたりだと、ずいぶん経験してるから、それに対しての気持ちの切替とか対処の方法とかいうのはあるわけだけど、彼にはそれはやっぱりわからないからね。そういった点では経験不足だから、どうしてもその気持ちの切替ってのができなかったっていうのかな。

 要するに18番までで1日なのに、15番までで終わらなきゃいけなかった、言葉は悪いけど残尿感、トイレに行っておしっこばーとしてあぁ気持ちよかったすっきりしたっていうふうに終われなかった。そういう残尿感みたいな。そんな言葉で表現したら悪いけどねぇ。

 結局18ホールというものをやれなかった。で結果的に残りの3ホールを、昨日の続きを1日越えたその日にやらなければならなかった。それがやっぱり彼のつらかったところだろうねぇ。

 初日の流れのままで16、17、18をやってたら2オーバーになってなかった。よしんばなってたとしても、最悪2オーバーになってたとしても、1日十分な睡眠を取って、18という区切りをつけられて、次の日に行くのとはぜんぜん違う。そういう点では打たなくていい2オーバーだったね。

 彼の他でも2日目のプレーの中で、初日よりも風は強くはないんだけど、やはり寒さがあって、初日のあのものすごく難しい、めちゃくちゃ難しいマスターズをてこずりながらやったイメージのままやってるプレーヤーっていうのがいたよね。だからサスペンデッドの魔力というのかな、あったね。

 テレビ見ながらいろいろ考えさせられることがあるねぇ。やっぱ自分が出たことが何回もあるから、あぁこれつらいだろうなぁとか、これたいへんだなぁとかね、ここはチャンスだ、ここはピンチだっていうのがやっぱ見ながらずいぶんあるけどね。ちょっとこう感情移入しちゃうっていうか、その場に自分が立ってしまうっていうところがある。

 で、まあスポーツ新聞では岩田さんがね、丸山は初日の13番刻めばよかったというようなことを書いてたね。かつて青木さんもジャンボも、刻むか刻まないかで迷って、結果的にチャレンジして失敗してさ、だから刻めばよかったんだってことを言ってるけど、そんなね、そんなことじゃないんだよ。そうじゃなくて・・・これは後日ちょっと詳しく書きます。


(1998.4.14掲載)

ゴルフ西遊記1周年です

 ゴルフ西遊記ができて1年。そっかぁ1年保ってるんだぁ〜。でもまだまだ続くね。なんかますます楽しくなってきたもん(笑)

 手伝ってもらってる清水さんがきついって言うんだったらそらダメだけどね。まあお互いの負担にならない感じだったら、続けられるもんだったらずっと続けたいね。

 こうやってやっぱり1年やってくると、こつがわかってくるっていうのかな、自分の出し方がわかってくるっていうのかな。それともう1つは、清水さんとの間で、お互いフィーリングってのがわかってくるから、いろいろ出しやすくなるしね。そういう感じで、なんかお互いやりやすくなってきたかなぁって感じがするね。

 あとあれだね、こないだもちょっと気がついたんだけど、技術的っていうか、クラブの選び方っていうか、要するに用具的なことだとか、肉体的なことだとか、技術的なことだとかで、オン・ザ・グリーン会議室とかメールとかで少し質問があったんだけど、そういうのも今度まとめていくつか答えられるようにしたいね。

 トミーチャレンジのホームページもできたけど、ここにしてもそっちにしても、苦痛になっちゃダメだからね。トミーチャレンジページは英語版もできたけど、極端に言えば外人さんが何人来るかわかんない、何人見るかわかんないけど、とにかくできあがった時がいちばんいい時だね。

 そういえば「西遊記」の英訳で困ったらしいけど、西遊記ってのは有名なのは日本だけなの? 三蔵法師、あの人の物語有名じゃないのかねぇ。日本だったら誰でも知ってるよね、西遊記って言ったらね。孫悟空とか。なんて言うんだろうね、西遊記の英語。

 話変わるけど、創君はゴルフやってるかな? 前にここで使われてた左の写真は、清水さんが子供連れて練正館に来た時のなのね。ちょっと一緒にパターやって。これでゴルフ好きが、ゴルファーが一人増えたね(笑)

 まあ、タイガー・ウッズは何カ月からか始めたって言うし、ダメだよ清水さん、せっかくの向上心の芽をつんじゃ。意外と創君がアメリカツアーで活躍する日が来るかも知れないんだから(笑)

 パットだけじゃなくて、ボールを打たせたほうがいいね。飛ぶのが気持ちいいんだから。ほんと、タイガー何カ月からやってんだし、うちの雅生だって確か2歳か3歳からクラブ振ってたね。

 でまた、そこで教えれば父親の威厳が出てくるわけだ。足をこうして手をこう持ってこういうふうにスイングするんだよっていうふうにね。自分がヘタだから、教えれた子供がヘタになるか? だいじょぶだいじょぶ。そんなのはぜんぜん平気。だいたいが昔のことわざにも言うじゃん。鳶が鷹を産んだって(笑)

 子供に才能がありませんって決めつけるのは親の怠慢。例えばこないだのオリンピックで金メダル取った選手だって、親が才能がないってあきらめてたらああはならなかったわけだよね。子供にはいろんな可能性があるわけだから、親がそれを制限しちゃ、やっぱりダメだよね。


(1998.4.15掲載)

尾崎智春という素材

 7日にトミーチャレンジの第1戦が開催されました。僕は35、35の70で2アンダーでした。

 米山君が優勝ですよ。道ゆずってあげないとダメだよねぇ(苦笑) 優勝スコアは66。でも言ってました。僕初優勝だからうれしいですって。ツアーの優勝はないし、グローイングでも、後援競技でも優勝がない。プロになって初めての優勝だって。もう大喜びだったよ。なんか妙に感動してたよ(笑)

 で、試合には智春君が出てきてね、一緒に回って、彼のゴルフを初めて見させてもらった。結局まあ、結論を言えばすごくいい選手だね。

 各パーツ、要するにアドレス、グリップ、セットアップね、それからテイクバック、トップ・・・要するに各部分を見ると全部問題点がないというか、いい選手だねぇ。

 ただそれをうまくつなげられないっていうか、例えばアドレスからテイクバックに移る、あるいはトップ、バックスイングからダウンスイングに移る、要するに静から動に移る瞬間、あるいはスイングが切り替わる時、ここがもう少し上手になるといいかなっていう感じだね。だから結局プレッシャーかかった時ってそこがいちばん難しいから、そこでプロテストに失敗してるんじゃないかな。

 すごくいい選手だけど、プロとなると、やはり直さなきゃいけないところはあるね。要するに克服しなければいけないところがね。ただし素材としては非常に華のある選手だし、彼みたいな選手がマスターズに立たなきゃおかしいよね。でまた立つべきだと思うし。

 パズルで言えば、最後の1つ2つが組み合わさってないっていうかな。それが組み合わされればほんとにもう、ほんとにスター選手だねぇ。

 智春君の順位は30位でした。最後ボギーボギーで惜しかったんだけどね。14番がバーディチャンスはずして、15番が惜しくもイーグルがはずれて、16番のショートがピン左1メートルないぐらいについたんだよねぇ。

 でそれはずして、だからもったいないもったないで来てて、智春チャージが見れるかっていう感じだったんだけど、17番で隣のホールに打っちゃって、そこでボギー。

 続く18番は左のカート道路近くに打って、セカンドがグリーン左にちょっとはずれて、でアプローチ寄せたんだけど、パッティングがちょっと入らんなかったね。というわけで最後がボギーボギー。あれはパープレーぐらいで回れたって感じだけどね。

 でもゴルフ自体はもうそんなレベルでやってるゴルフじゃないね。まあいつも68、69ぐらいでどんどんどんどん回れる素材なんだけどね。


(1998.4.16掲載)

本人の運と努力しだい

 智春君がなぜ、昨日書いたようになるかっていうのは、やはり彼なりのお手本っていうか、彼が考えてる親戚あるいは自分のゴルフのスタイルのイメージっていうのがあって、それがはっきりわかるんだ、僕には。

 結局僕が見てると、あっ彼はこういうゴルフを目指して、こういうゴルフを手本にしてるなぁっていうのがわかるんだけど、やはりジャンボとか、あるいはこうしたほうがいいという、そういう技術論っていうのかな、それがジャマしてるんじゃないかなっていう気がするんだけどね。

 やっぱり周りがみんな、必要最小限のアドバイスにとどめるべきだろうね。だから自分の場合で言ったら変なんだけど、例えば雅生を今見てても、これは極論的に言えば、彼が一流になろうがなるまいが、それは運だと思うんだ。

 親が、例えば僕が彼を一流にしようとしてもできるもんじゃないし、あるいは彼自身の努力なくして一流になれるもんでもない。だから、技術的に迷ってる、あるいは相談を受ける、あるいはよっぽど目に余るところがある、ということだったら言うけれど、それ以外はもう黙ってる。

 そうだねぇ、1年間で僕が彼に与える技術的なアドバイスっていうのは、1つ2つだね。精神的なアドバイスが2つ3つぐらいだね。1年365日あってだよ。

 極端に言っても、大成するもしないも、悪いけど本人の運と努力しだいだね。それでなれなかったらもうなれないでしょうがないんだと。それが人生なんだから。というふうに僕は思ってる。

 まあ冷たいとかね、親なんだからもうちょっと真剣に考えろよとかいうふうに思うかも知れないけれど、やはり僕は自分がやってる姿を見せることしかできることがないと思うんだよ。自分はこうやってるんだ、こんなにやっぱりゴルフって難しい、奧が深い、極めるっていうことがどんなに難しいのかっていう、難しいっていうのかな、ある意味で楽しくもあり、難しくもある。そういう姿を見て、彼がどういうふうに自分の人生に活かすか。

 そりゃあ、後ろ姿も見せなかったらかわいそうだけどね。後ろ姿ぐらいで、あとは本人がなんとか考えろっていうのが僕の考え。親の人生じゃなくて、本人の人生だからね。まあこれは1つの父親観だけどね。

 さて、話は変わるけど、今週はもう大阪でつるやが始まる。だけどこの3日間ずいぶん雨も降ってたから、グリーンがちょっと遅いかなぁ。水曜日はいい天気だったけど、日月火と雨だったから。

 まあ初日ぐらいまでグリーンの湿り気が残るだろうね。水曜日の午後から天気よかったし、木曜日も天気いいって言うから、まあ湿ったもんも随分なくなってくるだろうけど。まあ今週もがんばりますよ。

 コースの山の原は今年は何も変わってない。去年のいいイメージを持ってるから、ほんと一歩一歩いいプレーを見せていければ、自分の自信にもなるはずだね。今週はスコアでね、いい報告をしますよ(笑)


(1998.4.17掲載)

信じる気持ち

 前にも言ったけど、まだ自分でスコアを作るっていうこと、あるいはそれに向って全力でいくということ、それらをまだ信じ切れないっていうところがあるねぇ。

 要するに不安と自信のバランスみたいなものがあって、自分自身がこう、例えば、よくバーディチャンスにはつくんだけど、その残りのパットを入れるか入れないかで、その次のホールとか、次のショットの展開とかがずいぶん変わってくるよね。

 その時に、自分でそれが入るもんだ、もうこれは入るもんだし入れるもんだし、当然入って結果がアンダーにいくんだっていう、それを信じる気持ちっていうのかな。その気持ちがどれだけ強いかっていうことになってくるような気がするんだよね。

 だから例えば1カップフックのラインだとしたら、1カップ右のターゲットに向って打っていこうと。でいいストロークをすれば入るっていうような形でしかまだないんだよね。

 そうじゃなくて、もうそのパット自体が入っていくっていう、もう入っちゃうんだ、それは入るもんでしかない、って感じで、そういうふうに信じてる物ほど強いことはないよね。

 例えばお正月がきたら、子供はお年玉もらえるもんだと思ってるよね。これはどの子でもだいたいそうだよね、小学校中学校の子供だったら。ところが、ひょっとしてお父さん景気悪いからなぁ、いま会社危ないし、ひょっとしたらお年玉出ないんじゃないか・・・って考える子供っていないと思うんだ。

 どんなに世の中が不況であろうとなんであろうと、やっぱり小中学生の子供っていうのはもう、「お正月=お年玉をもらう」っていうのは、それは当たり前っていうふうになるわけだよね。

 それと同じでやっぱり、例えば2メートルのバーディチャンスが来た、3メートルのバーディチャンスが来た、あるいは4メートルのバーディチャンスが来たっていう時に、お年玉、これは入る、当たり前、っていうふうに、まあ極論ではあるんだけど、それに疑いをどれだけ持たないでいくかっていうかな。

 だからやっぱり、長い間スランプが続いたり、1年2年、あるいは3年という形で勝ってないと、自分自身を信じるということの難しさっていうのかなぁ。自分自身がよくなってるんだっていう確信はあるんだけど、よくなりきったっていう確信まではいたってないっていうか。そういうところでちょっともがいてるっていうところがあるね。


(1998.4.18掲載)

強い選手とは

 確信にいたってないという部分で失敗した例がある。先月のKSBでは、2日目の18番でイーグルを取った。18番と言っても午前のハーフ、あの日はインスタートだったんだ。午後のハーフがアウトコースでね。

 イーグル取って2アンダーになって、その後のアウト1番2番と立て続けにバーディチャンス2メートルぐらいにつけて、でそれをはずした。続く3番は、これちょっとトリッキーなホールで、まあKSBやった鮎滝っていうゴルフ場は全体的にトリッキーなんだけどね。

 で3番ホール、打ち下ろしのややドッグレッグのホール、フェアウェイ270ヤード付近からラフなんだ。50ヤード幅ぐらいのラフで、その手前に残すか、あるいはラフの先に行ってしまうか、そのラフの中に入ってしまうか、どっちでもチョイスできるんだけど、この時期だとフェアウェイはオーバーシードされてるけど、芝は枯れてるから、そのラフっていうのは枯れてるんだよね。

 だからフライヤーっていうのは怖がらなくていいから、比較的ピンの位置が奧だったりしたら、もうラフでいいや、いっちゃえっていう感じがあるんだ。で作戦通りフェアウェイのところを突き抜けてラフまで行ったんだけど、ラフったって、芝はそれほど元気じゃないっていうか、もう黄色く枯れてるわけだから、予定通りって感じで。そしたらそこから打ったらフライヤーして、グリーンオーバーして、危うくOBだったんだ。それをうまく助かって、まあボギーになって・・・。

 その時、あぁあの1番2番の与えられたバーディチャンスを物にできないっていうのはやっぱり、そのチャンスをしっかり物にしなければ、ピンチってのは必ずしのげないっていうふうに思った。チャンスを物にするからこそ、ピンチもしのげるんだっていうところがあるんだよね。

 だからやっぱりその時、チャンスに来た時に、もっともっと的確に自分が、それがそれこそ昨日の子供のお年玉に例えた話じゃないけど、それが当然というふうに思えるようにしないといけない。特に勝負事っていうか、こういうプロの世界で生きてると、それが当たり前って思えれば思えるほど強い選手っていうか、その時点で調子のいい選手っていうふうになるよね。

 ところがそれがやはり奥ゆかしくっていうか、人生山あり谷ありなんだとか、いい時ばかりじゃないとか、そういうふうに控えめに考えがちな人っていうのは、そこで例えばカップの左フチ狙って打って、それが抜けてしまった、あれぇ今の読みは合ってたのになぁ、なんで読みが合ってたのに入らなかったんだろうとか、あるいは芝目がちょっと読みより違ったのかなぁとか、あるいはスパイクに蹴られたのかなぁとか、そういう違う要素を常に自分の心の中に取り入れてしまうっていうところがあるね。だからよくないよね。


(1998.4.19掲載)

青い鳥をつかむしかないね

 結局、当然だろうっていう、そういう思い込みが強い人間であればあるほどスコアを作れるというか、出せると思う。ただそういう部分がゴルフ場の1番から18番までだけであって、そこからはずれれば非常に奥ゆかしさのある人間っていうふうになればいいねぇ。

 だけどそれだとまるでジキルとハイドみたいな感じだよね。またまたこれが、そんなもんでほんと人生いいんだろうかっていうふうに考えちゃったりするから、なかなか難しいね。

 じゃあそれを使い分けるのか。使い分けるっていうこと自体が、はたしてじゃあそれが、自分の素(す)ではない、素っていうのは自分の本心、本性、ほんとの姿、であるんだろうかと。使い分けなのか、それとももっともっと違う、ほんとの強さが出てくれば、使い分けとかそういうもんではないんじゃないか。

 例えばジャック・ニクラスのようにっていうのかなぁ。例えば今タイガー強いけど、タイガーだって決して、僕は最初の頃から一貫して言ってるけど、決して完成されてないっていうふうに言ってるよね。

 みんなが思ってるよりも、グランドにクラブを叩きつけたりとか、そういうことも多いし、やはり今一つみんなに愛されきる要素っていうのかな、そういう部分がないような気がするしね。でも強いよね。

 だからそういう点で、要するに彼には人間的な未熟さはあるけれど、それをカバーして余りある闘争心というのか、その思い込みというのか、それがある。それこそ彼なんか、お年玉なんていうのは、1月1日が来ればお年玉なんて何億円もらえるんだろうなぁなんて感じの、そのぐらいの思い込みの強さがあるよね。

 普通の子は、今年のお年玉は1万円いくのかなぁとか、あるいは2万円になるのかなぁとか、そういう感じのレベルかも知れないね。もっと小さな子供は5000円だとか6000円だとかそういうレベルかも知れない。でも彼の場合は今年のお年玉は10億を越えるのかなぁ20億なのかなぁとか、そんなような思い込みの強さっていうのがあるよね。

 だからバーディチャンスがきて、2メートル3メートルのパットなんて入らないとなーんでなんだ!と、これが入らないのはおかしいじゃないかと、そういう感じになる。ところがそこいくと自分なんかは、今のパットは狙い通り打ったのに、あそこちょっと読み切れなかったのかなぁとか、自分に非を持ってきてしまうというか、だからそこんところが今戦いだねぇ。自分自身の。

 あとはもうこういった部分を追い求めるしかないね。つかむしかないよ、青い鳥を。自分自身の中にいる青い鳥をつかめれば、昨日みたいに60いくつとかっていうゴルフがどんどんどんどん展開されるような気がするんだ。


(1998.4.20掲載)

入学式ボイコット問題

 ちょっとゴルフとは関係ない話なんだけど、こないだ埼玉県立なんとか高校で入学式がどうたらこうたらっていう問題があったよね。あれは僕が思うに、生徒側にしても2通りいると思うんだ。

 周りが騒ぐだけじゃなくて、周りのマスコミだ、あるいはPTAだ、あるいは教育委員会だ、っていうものが騒いで騒いで、校長に対して非難のあめあられだったよね。

 でも僕は校長の言う入学式軽んじたやつの入学を認めないというのもわかるんだ。じゃあ例えば結婚式というものを考えた時に、やっぱり厳粛になるよね。披露宴じゃくて式のほうね。やっぱり神前式にしても教会式にしてもなんにしても、やはりその儀式に乗っ取って進めていくわけだよね。

 結婚っていうものに対しては厳粛さを望むのに、じゃあ入学式にはそれはないかと。好きなようにやるというそれの、じゃあどこに厳粛さがあるんだろうかと。社会という視点から見れば、その厳粛さはないよね。

 人生の中に厳粛さっていうのはたくさんあるよね。だから入学式とかは厳粛さにのっとってやって、じゃあそのパーティみたいなのはその後にやるとかね。僕としては、そういうふうな感じでお互いに譲歩できなかったかなという気がするね。

 まあ全員が全員ボイコットしたわけじゃないから、そういう普通の入学式を味わいたい人間もいたと思うんだよね。お互いが意固地になって、意地の張り合いになってしまって、結局は身のないことになってしまったなっていう感じがしたね。

 だから子育ても同じようなもんで、子供が何を考えているのか、それを親がわからないといけないよね。まあ全部がわかるわけじゃないから、だいたいこんなふうに考えてるんだなぐらいはわからないといけない。で、この考えでは甘いか?って時にはデッドボールをくらわすのもいいんじゃないかと思うんだ。

 大事なのはおおよそでいいから相手が見えなければいけないってこと。で今回のは、校長には子供が見えなかったし、生徒にも同じことが言えるかなと思ったね。


(1998.4.21掲載)

ちょっときついねぇ……

 さてつるやが終わりました。3日目に解説やってくれって頼まれてね。まあ、2X位だったらテレビにも出ないし、じゃあ解説でもいいからとりあえずブラウン管に映ろうかって感じで(苦笑)

 でも今回はけっこうチャンスついてね。4日間で21バーディ、1イーグル。でももうちょっとねたくさん取るようにがんばるよ、もうちょっとしたら。

 パッティングとか、ほんとによくなってきたし・・・まあよくなってるよくなってるって言葉だけじゃなくて、やっぱり少しでも、ああいうショットとか、昨日のパットとか出てくると、あぁほんとによくなってるんだなっていう感じが出てくるよね。

 でもねぇ・・・でもここにきて風邪だよ。土曜日の夕方から変だったんだよね。喉がちょっと痛くて、月曜日はやっぱりちょっと熱出てって感じで。

 今週はキリンだから、注意してたんだけどねぇ。いつも着替え持って、寒かったらすぐ着替えて、セーターとかジャージ持って、とにかく注意してたんだけど、どうもこれ藤木の風邪がうつったみたい

 練習場で話した時に、けっこう至近距離だったんだ。で、次の日の新聞見たら風邪引いてるっていうんで、あれぇ、喉が痛いのこれが原因かなぁって思って(苦笑)

 今年の冬気を付けて、ほとんど、ひいてもちょこっとって感じだったんだけどね。今回の風邪は・・・こりゃちょっときついねぇ


(1998.4.22掲載)

オーガスタの練習ラウンド

 さてマスターズの話をしよう。いやぁ、今回はオメーラが最後の最後で勝ったね。ある意味では非常に劇的かも知れないね、ああいうのは。要するにファインプレーに見えないファインプレーっていうか。

 野球でいうと、すばらしい!っていうんじゃなくて、玄人っていうか、芸が玄人好みっていうのかな。意外と目立たないけど着実なプレーをしてて、最後にバーディパーバーディバーディで上がって、あれぇ〜って感じだったね。最後まで虎視眈々という感じ。

 まあカプルスもイーグルあったりしたけど、結果的にやっぱり13番とか、ショットミスっていうのかな。まああそこでやっぱり何かあったんだろうね。まあいろいろ考えさせられるマスターズだったね。

 ジャンボの話も書きたいんだけど、その前に、ずいぶん前にオン・ザ・グリーンの会議室で出てた質問について。確か去年の質問(苦笑)

 練習ラウンドについての質問だったんだけど、オーガスタの練習は練習日だけじゃなくて、その年に出場する選手だったら、それよりも前に練習することがだいたいできる。それ以外はメンバー同伴じゃないとダメだね。

 例えば雅生を連れていった時に雅生をラウンドさせようと思ったら、僕だけじゃダメで、メンバーが同伴してないといけなかった。でもマスターズに出る選手だけは融通がきく。

 早めに行ってラウンドしたいって言ったら、50%はイエスって言われるね。なぜかっていうとすいてるから。だけどこれを無制限にしてしまうといけない。公式にはいいよとは言えないよね。だから50%の確率ぐらいでイエスと言われると。

 歴代優勝者だけはいつでもラウンドできるけどね。マスターズの優勝者というのは、オーガスタのメンバーの証であるグリーンジャケットをもらえるわけだけど、メンバーになるわけじゃないのね。でもオーガスタでのプレーはいつでもできるようになる。

 たぶんオーガスタのメンバーは一生なれないだろうねぇ。メンバーという資格が発生してくるとすれば、せいぜいニクラスとかパーマーとかだろうね。


(1998.4.23掲載)

メジャーは苦しむところ

 前にも書いたけど、アメリカのサスペンデッドの多さ、あるいはマスターズのスタート時間の遅さというのが、丸山にはやっぱり響いたね。

 とにかくマスターズってのはスタート時間が遅いんだ。以前僕が8位になった時も、最終組が2時前、1時40、50分ぐらいのスタートだったかな。まあ2時前ぐらいだったんだけど、4日間その1時半ぐらいからだったからね。こんなんでホールアウトできるんだろうかって感じなんだけど、うまくホールアウトできるんだよね。

 いやぁしかし、返す返すも痛かったね、2人とも。ジャンボも相変わらずアウト苦手だねぇ。ダボのオンパレードになっちゃうもんねぇ。うーん、なんかねぇ、あれだけ技術があって、頭がいいんだから・・・。

 2日目の2番のボギーってのはダボのイメージだね。で3番ダボでしょ。もう17回出てるからわかってるんだろうけど、50センチ、1メートルの差というのがそういう結果になっちゃうんだね。

 そういえば、オーガスタに立った時によく言ってるね、みんな。楽しむとかスマイルだとか、喜びだとかね。今回ジャンボもテーマを出してたよ。でも、僕からするとこれが大間違い。これはっきり言わせてもらえば大間違い。

 今回の過ごし方はジャンボも丸も正解だったと思う。どっちもありなんだ。リラックスしていこうが、挑戦してボールを打ちながらマスターズに向ってこうが、どっちでもいいんだ。

 それぞれの過ごし方はよかったんだよ。だけど、そのテーマが違うんだよね。なぜか。マスターズとかメジャーっていうのは楽しむところじゃないんだ。苦しむところなんだ。

 その苦しみに行ってくる、その苦しみを喜べる人間じゃなきゃダメなんだね。エンジョイしてきますじゃないんだよ。と・こ・と・ん・苦しむっていう感じ。そのとことん苦しんだ、その苦しさの向こうには絶対に喜びが残るんだ。

 例えば、むかーし父親に怒られたこととか、むかーし痛い思いをしたこととか、全部楽しい思い出で残ってるじゃない。じゃあその時ニコニコ笑ってたことってどれだけ覚えてる? ほとんどないんじゃないかな。

 だからマスターズに行く時、苦しみに行くんだ。それが、楽しみに行くとか、そういうことじゃないんだ。だから51歳でメジャーに出れる、あるいはメジャーで優勝を争う、そのことに対して自分は喜びを持ちたいって言ってたけど、そんなことじゃダメだよ。51歳だろうがなんだろうが、招待されて行ったら、マスターズに出たら、優勝狙って苦しまなきゃいけないんだ。

 だからコメント見るたびに、いまのスポーツ選手が多く言うよね、楽しみたいですって。僕はなんか違うと思うんだ。楽しめるか楽しめないか、楽しかったですって言えるのは、とことん苦しみ抜いてその4日間終わった時に、満足感、よかった、あの苦しい場面も、あの苦しい場面も切り抜けて、よかった。その満足感なんだ。

 だから楽しく楽しくとか、喜びとか言ってる時に、なんか危ないなぁ危ないなぁって感じがしてたんだ、実は。


(1998.4.24掲載)

あれがマスターズ

 丸山のマスターズのプレーでいちばん偉かったなぁって思うのは初日の13番だね。

 初日9番でバーディ取って単独トップになって、10番ボギー打ったよね。でその後11番、12番をうまくパーで切り抜けて、で2アンダーで13番に立った時に、まあ非常に難しいチョイスだったよね。

 2打目を刻んで3打勝負、サードで70〜80ヤードのアプローチをするか、それともセカンドで狙っていくか、その2つのチョイス、そうとう迷ったと思うんだ。迷ったというか、迷うっていう言葉じゃないな、悩んだかな。迷うという言葉と悩むという言葉は違うからね。

 で悩んで、まあその結局彼はチャージ、要するに2オンを狙っていこうっていうことに賭けたわけだけど、あのセカンドショット、たぶんZOOMを使ったと思うんだけど、あのセカンドショットはもう本人としてはいい当たりだったと思う。アゲンストの中、自信を持って打ったショットだったね。

 3番とか4番とかいうアイアンだったら、ピンの右からドローでグリーンの中央に乗せて、ドロー回転で少しでもピンに寄せてくっていうようなイメージがあるけど、ZOOMで打つ場合だったら、あの距離、残りフロントまで230ヤードちょっとあったわけだし、やはり左の出っ張ったところに乗せて、それでまあグリーンの中央か、段の下でもOKという感じだったろうね。

 よしんばそれがちょっと左に跳ねて、あの丸山のボールの落ちたところから3ヤードぐらい左のラインだったら、グリーンの左の溝に入るわけだけど、この溝がU字溝みたいになってる。

 その時点でいいライのほうに、要するにグリーンのスロープにつけばアプローチ寄せられるし、グリーン側じゃない、要するにバンカー側のスロープについたら、まああとはパーでいいやという気持ちだったんだろうね。

 本人はナイスショットを打った。セカンド打って、ボールの行方を、よしそこだそのまま行けっていう感じで見ながら歩き始めて行って、もう自信持ってたと思うんだ。でもあれがやっぱりグリーンの手前のクリークに入ってしまうというのがマスターズなんだよねぇ。


(1998.4.25掲載)

求められてない世界

 自信持って打ったボールがクリークに入ってしまう。それがマスターズだなんて書いたけど、逆に言うとそれが日本ツアーでやってる悲しさっていうのかなぁ。要するに日本の場合、グリーンの花道に落ちれば2オンするよね。まずだいたいのケースでは。

 花道から手前に戻ってしまってバンカーに入るとか、池に入るようなコースはまずないよ。たとえ太平洋御殿場の18番のグリーン左のエッジに落っこちても、エッジから2、3メートル手前でも、あるいは5、6メートル手前でも2オンしてくよ。でもそれが池に入ってしまうのがマスターズなんだよね。

 たった30センチ足らない、たった50センチ足らないだけでも池に入ってしまう。それがマスターズでもあり、逆に言えばエッジにキャリーすれば2オン成功という、要するに◎印を自分に与えてしまうツアーでやってる甘さっていうのかな。

 やはり2オンでもマスターズに関して言えば、ほんとにキャリーで、グリーンのカラーを越えて来ないと、カラーまで来ないと2オンしないんだよと。ところがカラーじゃなくて、カラーの手前、要するにカラーに届かないショットってのははじかれちゃうんだよね。

 あるいはまあ、あの丸山のショットが1、2ヤード飛んでればよかったと思うんだ。でもその1、2ヤードよかったかどうか、その1、2ヤード飛ぶか飛ばないか、その要するに厳密さというのが普段求められてない、自分達には求められてない世界なんだよね。だから彼にしても、なんで池に入っちゃったんだっていう感じだと思うけどね。

 で悪いことにクリークに落ちたボールがまた打てるライにあったよね。でも打てるライと言っても、あの彼のスタンスから見ると、バンカーの方向だろうね。フェイスを開いて、なんとかグリーンの方向にボールを打って、まあ乗せて、20メートルぐらいのパット残るだろうけどまあ乗せたいという気持ちだったろうね。

 ああやってフェイスを開いて、スタンスはバンカーの方向、でもフェイスはグリーンの方向。あれで土手が土でできてれば、思い切ってインパクトできるんだけど、土手がブロックでできてたでしょ、石垣で。あれはやっぱり打てないわ。

 やっぱり4日間戦うわけだし、あの場面で優勝争いっていうか、あの場面でサンドウェッジ壊すわけにはいかない。残りまだ3ラウンドあるわけだし、そういういろんな思惑ってのがやっぱりねぇ。あれ普通の土だったら彼は乗せてたよ。

 かえってあれが池に入ってたほうが、ボギーで収まったり、あるいはパーになるチャンスがあったんだよね。だからそこがマスターズだったなぁって気がするね。


(1998.4.26掲載)

あれがベストチョイス

 マスターズ初日の13番で丸山2オンを狙ったことに関していろんな人がいろんなことを言ってる。でも僕はすごく思うんだけど、みんな結果論だね、はっきりいって。これを討論しあうっていうのは、レバタラをいつまでも言ってるようなもんであって、現場で本人がチョイスした狙いっていうのはベストなんだよ。

 あそこに立って、その状況でよしと思って選んだクラブっていうのは、もうそれ以上の最善の策はない。例えば彼がもしティーショットを、極端な話で言えば右の林だとか、左のクリークぎりぎりのところでスタンスも取れないようなところから2オン狙うっていったら、これはもう無謀だよ。それはもう絶対にいけない。それはもう狙わないほうがいい。

 中にはそれでも狙ったほうがいいっていう人がいるかも知れない。でもやはり有名な心理学者の言葉に“弱い人間ほどピンチになった時に攻撃的になる”っていう言葉がある。

 で彼の状況で2アンダーで、トップに1ストローク差で、そのフェアウェイのど真ん中で、そして11番、12番をパーで切り抜けてきてて、彼は決してピンチにいるわけじゃないんだよね。ピンチにいるわけじゃなくて、しかも230ヤードそこそこ。で、自分がいけるっていうふうに判断して打って狙ったショットに対して、もう後は何も言っても無駄。

 要するにそれがよかった悪かったっていうね、そんなことを言ってたらマスターズに行ってる選手がかわいそうだよ。それをピーチクパーチク言う、まあこの言葉は悪いけど、やっぱりそれだからゴルフファンとして、話がつきないおもしろさはあるんだけどね。

 ただ彼のチョイスは僕はベストだったと思う。だからそのベスト、自分が刻もうかな刻もうかなと思っていながらZOOM持って、で池に入れたんだったら、14番、15番をパーパーで行けないって。

 そんなバカげた後悔しながら、その次のホールへ行ったら、そんな弱い気持ちで行ったら、簡単にボギー・ダボ・トリプルが出ちゃうんだ、あのコースは。だから彼はそこで自分が選んだショットっていうのがベストなんだという気持ちがあるから、14番、15番をパーパーで切り抜けてるんだね。

 オーガスタの13番、15番のセカンドに立った時の決断っていうのは、行った人間、要するにプレーした人間じゃなきゃわからない。でさらに、あえて言わせてもらえば、解説してた村上さんとか、飛ばない人間にはわからない。飛ばない人間には絶対わからない。

 刻めばよかったんですよねぇとかそんなこと言ってるけど、あそこを2オンできる人間じゃなきゃ、やっぱり優勝できる可能性はないんだ。で、そこを2オンできる飛距離を持った人間があそこに行った時に、どれだけの判断する勇気っていうかな、その勇気を持ってその判断に決着をつけて、で自分が進んでく。その心理たるや、はっきりいって解説してる人間になんてわかりゃしない。

 まあ何度も書くけど、僕はほんとにあれがベストだと思うよ。


(1998.4.27掲載)

世界一難しいショートホール

 今日はオーガスタの話を書こう。初日すごい風だったよね。テレビの映像で見ててもわかるように、バンカーから砂が舞うぐらいだった。あそこの砂の粒子は細かいから飛ぶんだ、ぴゅーーと。

 あんな風吹いたことないって言ってる人がいたけど、いやぁ吹くんだ。特にマスターズは、雨の降った次の日は吹く吹く。12番のショートがあるでしょ。あのショートホールを5番アイアンか6番アイアンかで迷った記憶があるもん、僕。

 セベがたまたま優勝した時だったの、その時。で、セベがちょうど僕の後ろを回ってたんだ。その時確か3日目だったかなぁ。でその時に人のクラブをじーと見に来るんだよ。12番詰まってるから。何番で打ったのかなぁっていう感じで。でわざわざクラブ覗いて、まあこっちも見えるようにしてやってね(笑) 確か5番で、5か6で軽く打ったように思うんだけどねぇ。

 であの12番は初日、風が右から来てた。右から来てるとティーではややアゲンストに感じる。でやはり手前の池は怖いから、ちょっとでも届かなければ、バックスピンで池だからね。やっぱりグリーンにキャリーしたい。で感じる風がアゲンスト。

 そして上空は右から左に流れてる風なんだね。ところがティーにはアゲンストでちょっと気持ち来る。ところが悪いことに、旗は左から右向いてるんだ。だからあの風が吹いたら、世界一難しいショートホールになる。少なくとも僕が知ってるゴルフ場の中で、世界一難しいショートホール。

 風は右から左、ティーグランドではアゲに感じて、フラッグは左から右に流れてる。だから左オーバーしちゃう選手が多いんだ。だからあの風吹かれたらたまらんね。


(1998.4.28掲載)

オーガスタのショートホール

 オーガスタの12番ホールのグリーンの縦の幅は、いちばん細いところで7ヤードぐらい。左のエッジから右の奧までは20ヤード近くあるんだ。まあ17、18ヤードあるんだね。左のフロントエッジから右のエッジ。

 ただし、左のエッジから左の奧のエッジまでが11ヤードか12ヤードぐらいある。で真ん中が7ヤードぐらい。で右がやっぱりまた10ヤードぐらいしかない。要するにティーから左のエッジまでと右のエッジまでの差というのが10ヤード近くあるんだ。

 だから右打ちの人間にとって、右に行ったボールっていうのはやはり当たりが薄いから、キャリーが出ない。だから、池に入りやすくなる。あれが反対に右手前があって左が奧になってれば、もっともっとやさしいショートホールなんだよね。

 あのホールをやさしく感じるのはフィル・ミケルソンだろうね。つかまったボールはどんどんキャリー出てくれるから、要するに彼で言えば右に行くボールはどんどんどん距離が出てってくれるわけ。だからミケルソンにとっては、右打ちの選手ほどあそこの難しさは感じないだろうね。

 でマスターズのショートホールは、全部のショートホールがたいがい、16番以外は、右に行けば行くほど難しくなっちゃうんだ。4番がやっぱり右のフロントエッジと左のフロントエッジを比べると右のフロントエッジのほうが遠い。だからしっかり打たなきゃいけないっていう気持ちになる。

 で6番もそうなんだ。6番は全体的にほとんどまあ丸に近いんだけど、実際は右のグリーンっていうのがグリーンじゃないんだよね。もう絶壁になってるから、右の段の上っていうのは、実際そこの段の上までキャリーしなかったら、右のグリーンのエッジなんか、グリーンにちょこっと乗っかったって全部出ちゃうんだ。

 だからやっぱり同じように右に行ったボールは飛ばないけど、ピンに向ってまっすぐ打ってったら、いいショットしたら寄る。ただし、少しでも逃げる気持ちがあったら寄らない。オーガスタのショートホールはこんな感じだね。であの風があったから、とにかくもう、みんな神経使いまくって回ってたと思うよ。


(1998.4.29掲載)

“出場が夢”では優勝できない

 風といえば、あの風の中、みんな神経使って回ってた中、ニクラスががんばってたね。ニクラスはね、もうマスターズ知ってる。あの大風が吹いてもやっぱりコースに逆らわない。

 それからもう1つはやっぱり、グリーンジャケット持ってる人間の強みだね。これどういうことかっていうと、やっぱり優勝したことがない人間と優勝したことがある人間は、もう最初からハンデがついてるんだ。

 やっぱりね、マスターズって物に毎年出られればいろんなことができる。例えば、例えばだよ、14番で2日目にピンが切ってあった位置の右手前でグリーンから戻ってきちゃったと。であの時にグリーンジャケットを自分が持ってる人間だったら、ランニングアプローチでいこうか、2クッション3クッションでいこうか、それともハイピッチはあり得ないけどハイピッチで打とうか、様々なチョイスができる。予選落っこちたって来年出られるんだもん。

 ところが、招待されなきゃ出られない、資格を取って招待されなきゃ出られない選手っていうのは、そんな悠長なこと言ってられないんだ。言い換えれば、大学でもそうだよ。すべり止めを受けておいて東大を受けるようなもんだし。

 うちのかあちゃんの幼なじみに、東大京大をぽんぽんと受けておいて、両方とも通っちゃうような人がいるんだけど、そんな人間がすべり止めを考えてじゃあどこいこうか、どこ受けておこうか、慶応か早稲田か・・・なんだか知らないけど世の中そういう頭のいいやつがいるんだよね。

 話がそれた(苦笑) 例えば、それこそセベなんか、ここんとこのあの成績でいけばマスターズに招待される選手じゃないよ。でも出られちゃうんだ。その点ジャンボにしても丸にしても、ハンデが最初からあるんだから、楽しもうと思ったって無理だって。

 でまた、来年の出場権を狙いに行くっていうこと自体が、変なものを感じるよね。なんのためにマスターズに出るんだって。来年出るために出てくのか。そうじゃないよね。優勝争いをして、あわよくば優勝しよう、そう思って出てくわけだ。ところが来年の出場権を得るために出てく、とりあえず来年の出場権が最低線のラインだ、または予選通過が最低線、そしてよければ来年の出場権を取る。あわよくば優勝争いしよう。どれを目標にしていいかわかりゃしない。

 だからね、マスターズに出るのが夢だっていう選手がいるよ、たくさん。でもそういう選手は絶対マスターズで活躍することはできないね。マスターズで活躍じゃないな、優勝することはできないだね。夢がそこだから。小さい頃からマスターズに出ることが夢でしたっていう人間は、出られることによって叶えられちゃったんだもん、夢を。


(1998.4.30掲載)

50年経っても……

 マスターズ本当の意味での優勝争いができる選手が出てくる時、これはマスターズで優勝するのが夢でしたっていう人間じゃなきゃダメなんだ。そういう子供達じゃなきゃいけない、そういう若手でなきゃいけない。

 昨日も書いた通り、出ることが夢というのは、出ただけでもう叶っちゃっうんだから。自分はマスターズでグリーンジャケット着ることが夢ですっていう人間じゃなきゃ優勝争いできない。

 中島常幸は18歳で日本アマに勝ったんだ。その最年少記録っていうのは25年破られてない。25年っていうと四半世紀だよ。マスターズで7アンダーっていうスコア。この記録も持ってる。67っていう1日の最少スコアも持ってる。

 マスターズではアンダーパーを2回記録してるんだけど、7アンダーっていう数字、スコアを破る選手は現状出てこないね。たぶん50年やぶられないと思う。半世紀。いまのまま行けば。

 7アンダー出したのは1991年のマスターズ。それから50年と考えると、2041年だよ。ということは、日本人はこれから先、2041年まで記録を破る選手が出てこないんだよ、現状のままいけば。

 だからマスターズでグリーンジャケット着るのが自分の夢ですという選手が出てくるか来ないかが問題。なぜそうかっていうと、マスターズでグリーンジャケット着るのが夢ですっていう選手は、いろんなとこで育つ。

 日本ツアーだけじゃない。アメリカもヨーロッパも、そのミニツアーも、あるいはアフリカサーキットも、自分の選択肢を最大限に広げていって、インターナショナルに育っていくんだ。

 だから丸山がいみじくも言ったよね、日本にこういうコースはないって、未知の世界だって。そういう未知の世界、別世界で育ってる限り、いつまでたったってそりゃ無理だ。別世界で育った最高峰で7アンダーが最高なんだから、そこで育ってる限り、50年たったって抜けないね。