バックナンバー(1999.7)


(1999.7.1掲載)

腕が振れる

 昨日に引き続きもう1つアドバイスを。よく腕が振れなきゃいけないってことプロが言うよね。この“腕が振れる”ってどういうことなんだろうって考えてみると、即答でぱっと答えられる人ってたぶんいないと思うんだ。まずアマチュアの人はそうだと思う。プロでも調子の悪い選手はそうだろうし、プロでもほんとに技術的な本質をわからないと、腕が振れるってどういうことなんだろうってわからない。

 で腕が振れるっていうことが実験してわかる方法が1つある。それはクラブを普通に持つよね。5番アイアンでもいいし、3番アイアンでもいいし、あるいは7番アイアンでもいい。持ってかるーく振ります。左手1本で。左手1本だよ、右手じゃなくて。全力じゃなくてかるーくでいいから、かるーくでクラブを持って振る。これをやります。

 次は逆にヘッドを持ってグリップを振ってみる。これをやると普通にグリップサイドを持ってクラブヘッドを振ったほうが、要するに普通の状態で片手で振ったほうが腕は振れてる感じはするはず。スピードは遅くてもね。逆にクラブヘッドを持って、グリップ側を振ると、スピードは速いんだけど振れる感じがしない。

 ここで遠心力を感じるでしょ。問題はここにあるんだ。遠心力を感じるか感じないかっていうところに、振れてる感覚が自分に芽生えるか芽生えないかっていうことなんだ。ということは、遠心力が振ってわかるってことが、腕が振れるってことなんだね。これはスピードじゃない。腕が振れてるっていうのを勘違いしないでほしいのは、速く振れるから振れてるってことじゃないと。

 腕に感覚的にクラブヘッドを感じて振れるってことが、腕が振れるってことなんだ。だから練習場に行って、かるーくウォームアップをする中で、できれば左手で7番アイアンぐらいを持ってかるーく、左手1本で素振りを4、5回やると腕が振れてる感じがする。それでこの気持ちよく振れるっていうことをものすごく大切にしてほしい。

 で、この気持ちよく振れる感じに体全部がついていければいいわけ。右手をそえていけばいいし、それが振りやすいスタンスの幅であればいいし、スタンスの方向であればいい。これが腕が振れる理想のフィーリングだよね。だから逆に言えば、クラブをそう持って、軽く振って、最後に落ちついてふっとアドレスの時にポイントに戻すとするよね。その時の左手とクラブのフィーリングを大切にアドレスを取るってことが大事。

 これは相当わかりやすい説明なんだけど、まあ実は井上君の受け売りと言われてしまえばそれまでなんだ(苦笑) まあ井上君からのレッスンで、せっかくこういいことを聞いて、いいフィーリングをつかみやすい方法なんで、できればこの西遊記の読者がそういうことを参考に腕が振れるようなスイングができればいいなと思って話をしました。


(1999.7.2掲載)

イップスになる人ならない人

 前にジャンボのアドバイスで鈍感なパターに替えたって話をしたけど、その時一緒に、左手の持ち方を若干変化させたんだ。そうしたら結果的に肩が動くようになったんだ。この、肩が動かない人っていうのは実はイップスになってくるんだよね。

 なぜかというと、どうしても肘から先でパターを打とうとするよね。肘から先でパットしようとすると非常に変化が出やすい。だから肘を固めてショルダーストローク、肩でストロークできなきゃいけないんだ。

 だけど、肩が動かない人間がショルダーストロークはできないよね。だから、肩が動かなくなってくるからイップスになってくる。逆に言えば、肩が動けばイップスは消えてくるんだね。これはよく覚えておいたほうがいいよ。肩が動く人はイップスにはならない。あるいは青木さんみたいに完全にタップ式で、完全に手首から上を固定してリストだけでパンと打ってく。そういう人もイップスにはならない。

 だからショルダーストローク的なタップ、ショルダーストロークに近いというか、ショルダーストロークのように見えるリスト打ちの人がイップスになる。これはもう100%といっても過言じゃないね。


(1999.7.3掲載)

消化吸収作業

 左手の握り方を若干変えた時、いろんな方法を試したんだ。予選落ちした三菱の時だったんだけど、そういう点ではけっこうパッティングに関して意義深い2日間で終われたね。だからそれが次の東北の時に出たっていうのかな。だから東北ではそのパッティングに助けられたのね。

 でもその東北の時、パッティングはよかったんだけど、ショットが悪かった。ショットは見事に右左に散りまくって、ほんとかいな?っていうぐらいの散り方をしたんだ。それで井上君に話をして、どうにもフィーリングが出ないんだ、なんで出ないんだろうという話になった。

 フィーリングが出ないっていうのはいったいどういうことかっていうと、やっぱりプロゴルファーがフィーリングが出ないって言う時は腕が振れない時なんだね。構えられない時か、スイング的に言えば腕が振れない時、そのどちらかだね。だから構えた時に、なんか変だな不自然だな、どこ向いてるかわからないという時か、腕が振れないぞという時のこのどちらかと。

 自分の場合は、構えてる方向はだいたいわかってる。これでいいなっていう向きに構えられるんだけど、振ると全然違うところに行く。要するに腕が振れないわけ。あれぇ?ってことで井上君と話をしたんだ。

 まあ井上君も見てる選手が多いから、その火曜とか水曜とかスケジュール組んでるんだ。でだいたい彼が来るのが水曜日だから、その水曜日に来られても何時間かしかその調整時間がないよね。木曜日から試合だから。だからできることもできないし、できることもわからないこともあるわけだ。要するに自分の中で消化しきれない。

 例えばご飯を食べて、噛んで飲んで、で消化されて、胃と腸で消化吸収されるわけだけど、それが全身に回って初めてエネルギーになるわけだよね。だからそれと同じで、水曜日に噛んだとしても、水曜日中にはエネルギーにならないわけ。だから困っちゃうんだ。だからこういう1週間時間が空いてる時には、彼も2日間ぐらい来てくれて、集中的にその消化吸収作業をするんだ。


(1999.7.4掲載)

なぜ映像がおもしろくないか

 先週開催されたミズノトーナメントというのは、これは僕の感じてることなんだけど、毎年毎年同じコースで開催される試合の中で、この瀬戸内海ゴルフクラブというのは必ずトップクラス、それもほとんどいつもトップ3に入る難易度を保ってくるだろうね。

 それだけのいいフィールドだから、ある意味で14本全部のクラブをしっかりと使えないといけないコースになってくるし、グリーンもいくらでもハードに仕上げられるような、そういう難易度を持ったコースなんだ。だからたぶんここでの試合を楽しみにする選手がどんどんどんどん増えてくるんじゃないかな。

 また福山という土地は、地理的に気持ち不便なところなんだね。だから観光地の宮崎のフェニックスとかだと、どうしても普段の営業の時にお客さんがたくさん入る。だからコースレイアウトとかは非常にフェニックスもすばらしいんだけど、メンテナンスっていう点で言えば、瀬戸内海ゴルフクラブのほうが、いいコンディションは作りやすいだろうね。

 で楽しみにして行ったんだけど予選落ちしちゃった(苦笑) で土日はテレビで見てて、またちょっと中継について思ったんだ。まあ1つ言えば、なぜ日本の映像がおもしろくないかっていうと、今回の映像見てて、確かにミズノトーナメントではすごい工夫をしてた。上空から撮ったり、映像的にあのゴルフ場の難易度をあらわそうとしてすごくがんばってた。

 でもいかんせん何がいちばん足らないかっていうのは、やっぱりカメラの台数なんだ。じゃあ台数を増やせばいいっていうふうに言う人がいると思う。いろんな小型カメラを使ったりとか、あるいはハンディカメラ、もうそういういろんな機動力を使って、たくさんの映像を固定カメラだけじゃなくて撮ったらいいんじゃないかっていうふうに言う人がいるんだけど、カメラ1台用意するだけですごくお金が、要するに経費がかかるんだね。


(1999.7.5掲載)

日本のスポーツ中継

 中継のカメラを増やすということは、1台のカメラに絶対2人必要になる。配線とカメラ持ってる人が必要だから、絶対に2人は必要。そうなってくると、例えば4台カメラを増やそうとすると、8人必要になってくる。8人の人間が増えるっていうことと、4台の小型カメラが増えるってこと、また4台のカメラを切り盛りする機動力が必要になってくるよね。そうするとものすごい経費が必要になってくる。

 今のトーナメントでは元自体が取れないんだから、そこまで経費をかけてやれるかということになる。いままで例えば5000万円制作にかかってましたと。じゃあそれを今4000万円にして同じ映像を取れないかっていうふうにみんながんばってるわけだよね。ところが小型カメラ、ハンディカメラ増やすっていうことは、5000万円で済んでた制作費が、6000万円かかります。4000万円にしたいのに6000万円かかってしまう。それはテレビ局だって制作会社だって首を縦に振らないよね。

 例えばミズノの最終日、渡辺司選手が15番ホールまで競ってきてたよね。で16番ホールのパッティングにしても、もっとラインを読みたかった。もっとラインがわかるような映像が見たかった。16番ホールでティーショットを何で打つのか。スプーンだって解説が言ってるのに、スプーンかどうかもなかなかわからない。でわかったら右手前のバンカー手前のラフ。そこに映像がぱっといってどの程度のラフなのか、どのぐらいの深さなのか、ボールをアップで映す、それも見たかったよね。

 そこからグリーン手前のバンカーに入っちゃった。司選手はたぶんピッチングでいいショットをしたと思うんだけど、そのショットがバンカーに入っちゃった。そのバンカーの映像も目玉なのか、ナイスショットで打ったボールがあごの深いバンカーに入ったら目玉になることは多々ある。その映像も見たかった。いろんな見たいものがあったよね。

 でもそれが見られないのは、なぜかっていえばカメラの台数が少ないから。で台数を増やせない。なぜかっていうと経費がかかるから。日本のプロスポーツで、経費がかからずに、十分な映像を見れるとしたら、相撲とジャイアンツ中継、まあ最近ジャイアンツ中継がうんと言えるかどうかわからないけど、あとは西武の松坂選手が出る時と、まあ巨人阪神戦ぐらいじゃないかな。日本のスポーツで映像的に満足できるとすれば。オリンピックとかそういうのは別にしてね。

 普段普通に流されてるテレビの映像、スポーツ映像として、まあまずちょこちょこ初めから終わりまで見てられるっていうのは、相撲とその野球のある一部の対戦カードだけだろうね。それ以外は無理でしょう。なぜかっていうとスポーツに対してそれだけお金をかけない。言い換えればスポーツに関して、国民全体で考えると、意外とスポーツって関わりが少ないのかも知れないね。


(1999.7.6掲載)

運動を敬遠している

 こないだ特命リサーチっていうテレビ番組でやってたんだけど、日本人の体が硬くなったっていう番組があったんだ。確か日本人の平均で、前屈が6センチぐらいだったかな、硬くなってると。要するに爪先のほうに手を伸ばしていって、どれだけ前屈できるかっていうやつなんだけどね。

 それは何が原因してるかっていうと、基本的に8歳から9歳ぐらいの年齢の時に運動することによって、筋肉のコントロールシステムがよくなるんだって。だから前屈する時には、腹筋に力が入って、後ろの大腿二頭筋がリラックスするんだけど、これがその少年期の時期に運動してない子供っていうのは、リラックスしにくいんだという話なんだ。だからそのコントロールシステムがすごく悪いなって、体が硬くなっちゃう。

 というのは、生活様式が変わったっていうこともあるらしいんだね。どんどんどんどん物が便利になって、それが普通の生活になったりね。例えばリモコンになったりコードレスになったり、いろんな生活様式が人間の体を便利にさせたっていうか、こう要するに体がどんどんどんどん硬くなる。

 そういうような仕組み、仕組みっていうか生活様式になってきてはいるんだけど、基本的にやっぱり運動その物っていうものを日本人が敬遠してる。

 だから僕は思うんだけど、ゴルフっていうのはやる人がいるから、おもしろさがわかると思うんだ。ゴルフをやるからプロゴルフを見てみたいと思うっていうのが順序だと思うのね。ゴルフやらない人がテレビ番組を見るっていうのはほとんど少数だと思う。ほんとに非常に少ない数だと思うんだ。

 だからゴルフをやってるからゴルフの番組を見たいと思うわけだし、ゴルフをやるっていうことは、やっぱり若い時からスポーツをやっていたり、あるいは少なくともやってみたいっていうふうに思わない限り、クラブを持たないと思うんだね。


(1999.7.7掲載)

スポーツをないがしろにしてる

 それからもう1つは、スポーツというものをもっと国が評価しないといけないと思う。なぜかっていうとスポーツっていうのはルールがあるんだ。ルールがあるし、それから友情もある。いろんな意味でこの社会を生きていく上で、必要不可欠な物というのがたくさん詰め込まれてる。それなのにそのスポーツをないがしろにしてる。

 だって国は体育の時間をもっと減らせっていうふうに指導したんだよ。文部省が学校の体育の時間をものすごく少なくしようとした。あんまり正確な記憶じゃないんだけど、確か1週間に2時間ぐらいにしようとしたんだ。

 ところがそれではいけないっていう世界保健機構から、それじゃ少なすぎる、体力が落ちるからダメだっていうことで、体育の時間をそこまで減らしたらいけないという通達がきて、1週の体育の時間が確か3時間ぐらいになったんじゃないかな。そのぐらい学校教育の中でも体育が少ない。

 スポーツには、上下の関係、横の友情、それから自己に対する厳しさ、ルール、いろんなものが入ってる。それを推進しないで、なぜ健全な国家になれるのか。健全な日本の国が発展してく要素が少なくなっちゃうわけだよね。

 まして塾がありファミコンがあり、そしてますます子供達が体を動かさなくなってくるよね。それで少子高齢化時代だから、最近ゴルファー人口、要するにゴルフをする人口が減ってる。ゴルフだけじゃない、スポーツをする人口が減ってる。だからこういう展開でいくと、ますます不安な状況になってくるよね。

 だから日本がこのままいくと難しいとこがあるね。確か、日本の子供達の学力レベルが今現在下がってるっていう方向にきてる。でアメリカとかっていうのはやっぱり数学とか理科系の授業がすごくしっかりしてる。でも今、日本は逆に理科系とか数学系を少なくしてるよね。ゆとり教育とかなんとかって言われるんだけど、その勉強を少しでもゆとりを持たせて、その他のところで子供達の健全な教育を成長を願ってるって言うんだけどね。


(1999.7.8掲載)

はり倒されないとダメかも……

 そのゆとり教育という部分で、子供達の健全な教育を成長を願ってるらしいんだけど、でも現実に今、TOEFLっていう英語の基礎能力があるよね。あれがアジア地区全体の中で下から3番目なんだ。下から3位だよ。

 確かに、ほんと東京のいろんな場所で、外人さんが英語で質問したりするテレビ番組あるけど、まずまともな答をする人っていうのはほとんどいないよね。もう砂浜に落っこってる指輪を探すぐらいたいへんだもんね。でこのまんまいったらどうなるんだろうかっていう、どうなっちゃうんだろうかっていう不安ばっかりだよね。日本が抱えてるのは。

 だからことゴルフ界だけを見ると、いろんなゴルフ界だけに起こってる現象じゃないっていうか、ゴルフ界だけ見てもこんなにあるわけだし、社会全体で見るとすごいことになってるぞって感じだね。

 やっぱり日本人は、横っ面を1発はり倒されないと、そういう事件がなんか起きないとダメなのかも知れない。結局そこの国の若者がダメになっていけば、そこの国全体がダメになっていくからね。その国の10代、20代、その青年達がほんとの意味で国を支えるわけだから、その人間達がやっぱりそういうふうに今TOEFLが3番目だとか、スポーツがダメだとか、全体がそうじゃないけれど、割合が多くなってるからね。なんか横っ面をバチンとよその国にはり倒されないといけないのかも知れない。

 僕は日本人っていうのは愛国心っていうのはすごくあると思うんだ。でもその愛国心っていうのを、太平洋戦争で負けて以来、今の団塊の世代達が愛国心とか国を思う心、国を憂う心、あるいはそういう今のアメリカ人達、あるいは昔の日本人達が持ってたものっていうのに対して、ある意味で蓋をしてるっていう感じがするんだ。ほんとはあるんだけど、わざと見ないようにしてるというかね。


(1999.7.9掲載)

偏食になってる

 その蓋をしてる愛国心というものが、なんかパーンと横っ面をはり倒されることによってその蓋が取れて、その眠ってた愛国心っていうか、そういうものが出てこないと、なんか最終的に世界の中で、あるいはアジアの中でも取り残されちゃうと思うんだ。

 現実に貿易の中心は、アジアの中では今までだと東京、横浜、あるいは神戸だったよね。そういう日本が西洋諸国、要するにアメリカとかヨーロッパからの貿易のセンターになってた。でも実際、いろんな国が立ち上がって、上海だとかが太平洋戦争後にリニューアルしてきたり、シンガポールだとかマレーシアっていうのもすごくがんばってるよね。そういう点で日本のその能力や学力がなくなってくると、結局そういうところに経済力が取られていく。

 だからといって僕が言いたいのは、学力がなくなっていくから勉強しろ勉強しろっていうんじゃなくて、例えば肉と野菜、要するに食生活と一緒。肉ばっかり食べ過ぎたら、あるいは野菜ばっかり食べ過ぎたら、絶対に体のバランスには悪いよね。だから全体をバランスよく取るっていうことは、当然学力、要するに勉学もそうだけど、やっぱりスポーツとかあるいはレジャーだとかもバランスよくやらないといけない。

 レジャーっていうのは別にスポーツだけじゃないよね。例えば映画を見に行くとか旅行に行くとか山に行ったり川に行ったりとか、いろんな方法がレジャーにはあるわけだよね。趣味もそうだし。いろんなことがあるわけだ。社会生活をする上でバランスっていうのがあると思うんだけど、食生活に例えて考えるならば、偏食になってるんじゃないかなって気がするんだよね。

 どう考えても偏食になってる。だから偏食になってれば絶対体壊すから、体壊すってことは、言い換えれば国が壊れるってことだと思うんだ。もうその障害が出てるよね、実際。日本の実社会の中で、ゴルフ界だけじゃなくて、そういうものが出てる。


(1999.7.10掲載)

1ドルは1ドル

 実はアメリカっていう国も病んでる。こないだも高校で銃の乱射事件があったよね。あんなことは健全な国ではまず起こらない。だから別にアメリカをマネしろっていうんじゃなくて、そういう良さを取り入れて日本風に発展させていったらどうかってことなんだ。日本には日本の育ち方、スポーツの良さを取り入れて日本風に育ってく良さっていうのが絶対に道があると思うんだよね。

 アメリカの話が出たところでちょっと違う話になるんだけど、一時、日本の賞金が高い高い高いって言われてたよね。日本国内で世界一の賞金を稼いでるジャンボを引き合いに出されて、ノーマンの賞金と比べられた。でもあんなトリックって、誰が考えたって少し考えればわかるよね。円とドルを為替レートで換算すればいくらでも変わるわけだね。

 あの時に1ドルの本当の価値っていくらなのっていうふうに考えたら、アメリカで1ドルを使った時、日本でいういくらぐらいの感覚なのっていうふうに考えてみれば、あのジャンボの比べられた時の賞金っていうのは、僕はそうはならないと思うんだ。アメリカの1ドルは、アメリカ国内で言えばずっと1ドルは1ドルなんだ。

 じゃあその1ドルで何が食べられるのか、何が買えるか、そう考えてみると、その当時1ドル約200円ぐらいの価値があったと、僕はそういうふうに思う。ということは、100万ドルとすれば、2億円だったと。で賞金獲得200万ドルとすれば、円に直すと4億円。

 ところが確か1回、1ドルが90円を割ったよね。89円か88円だった時期がある。だから例えば1ドル90円と考えれば、200万ドルっていうのは1億8000万円っていう計算になってしまう。それは円とドルで比べるからそういうことであって、ドルはドルで考えたら、アメリカの中で200万ドルっていったら日本で言う4億円ぐらいの価値はあったと思うんだ。


(1999.7.11掲載)

30年の差

 さらに日本とアメリカのツアーを比べると、向こうのツアー選手は飛行機、ホテルは半額、プレーフィはただなんだ。食べ物も安い。1日1万円、1週10万円もあればだいたいまかなえてしまう。

 ところが日本では、遠いところだと遠征費がなんだかんだで40万円、キャディなしとしても30万円かかる。こういうふうに経費と賞金の関係を考えた時には、やっぱりアメリカのほうが圧倒的に安いわけだね。だから賞金が高い高いといってた時でも、優勝賞金が1億円ぐらいないと、経費としては同じにならなかったと思う。最低でも6000万円ぐらいかな。

 その昔、日本が景気がよくなってきて、日本の円でいろんな有名選手を日本にひっぱってきたよね。一時のダンロップフェニックスなんてセベもノーマンもファルドも来て、そうそうたるメンバーが来てた。1980年代かな。ところがだんだん円の力が弱くなって、バブルが崩壊してからは、ダンロップフェニックスだってレベルとしてはアメリカでは安いトーナメントと同じになってしまった。そういう中ではもう有力選手を呼べない。

 日本が高度成長期にあった時には、やっぱり経済の支えっていうのをゴルファーも支えてたから、アメリカに近づいてた。力量的にも、アメリカにどんどんどんどん追いつけ追い越せっていうイメージがあったから、だから20年の差があったのが10年に縮まったっていうふうに言われた。

 でも僕がこないだマスターズ行って帰ってきて思ったのは、アメリカとの差は30年に広がった気がするんだ。で今後もひょっとしたら、今のままいったら、30年が40年になり、50年になり、やがて永遠に届かない・・・そういう差になってくると思う。要するにスポーツというものを巨大なビジネスとして考えられない感じになるかも知れない。

 結局はエコノミーの問題だから、いちばん最初に影響がくるよね。日本は今、この苦しい経済状況の中で、なんとかいままで通りの試合にしようと、維持しようとするだけでたいへんなわけだね。バブル期以降の右肩下がりを押さえようと、すべての関係者が努力してる。それだけは覚えておいてほしいんだ。


(1999.7.12掲載)

一進二退→二進一退

 広島コースがよかった。グリーンも固くて、フェアウェイに打たないとなかなかピンは攻められないっていうコースセッティングだった。そういう点では非常にコースがよかったね。フェアウェイもずいぶんしぼってあったし。まああの八本松のゴルフ場は距離があまりないだけに、フェアウェイのしぼり方とかグリーンの仕上げ方とかがほんとによかったね。

 しかし、手島君も惜しかったね、今回は。でもまあ最終組でジャンボと一緒に回って、まあ彼も前半いいゴルフしてたんだけどね。まああの9番のイーグルでちょっとこう、なんていうかな、あのイーグルっていうのが優勢に試合を進めてた中で、一発の強烈なカウンターとして入ったというかね。

 でそれでちょっと足下がクラクラきちゃったかなと。それが10番ホールのボギーにもつながったし、仮にあのジャンボのセカンドショットがちゃんと当たらずに、仮にパーで終わってたら、手島君がいったような気がするけどね。

 でもそれは今回そういう勝負の運だったわけだし、彼がまたそれを受け入れて、これをまた1つのポイントにして、自分の財産として次の大会に活かせれば、次の優勝争いに活かせればいいんじゃないかな。また今週新しい試合が始まるんだからね。また今日から新しい試合が始まるんだから。いくら勝ったって言ったって、勝った瞬間には過去になってるんだからね。まあがんばってほしいね。

 それはそれとして、僕のほうはほんと、一進一退と言いたいところだけど、一進二退ぐらいを繰り返してる。非常に苦しんでますけど、まあ帰ってきてから30分ぐらいかけて西遊記見ててね、ほんとに勇気づけられるっていうかね。まあ何回か、西遊記を休みたいとかいうことも考えたりしたんだけど、帰ってきてじーっと見てみると、やっぱりその西遊記の中では自分達の中で独特の時間が流れてるよね。

 だからすごく自分にとってうれしい材料だし、がんばれることの1つになってるなぁっていうのがあって、帰ってきてから読んでて、がんばらなきゃっていう気持ちになってこれるんだね。だからめげずにどんどんどんどん、一進一退にとりあえずして、それから二進一退ぐらいに変えていって、前進していきたいなっていうふうに思うんだ。まあ僕のほうもがんばりますよ。


(1999.7.13掲載)

日米の違いは芝

 しかしほんとジャンボはすごいね。15アンダーというスコア、それからイーグル。とてもそんな簡単に、大きなスコアが出るコースセッティングじゃなかった。日本はコースセッティングが甘い甘いって以前は言われてたよね。でも今年に限ってみると、ほんとにコースセッティングがタフになってきた。だからそういう点では、日本のツアーも決してやさしいコースではなくなってきたね。

 ただ日本のゴルファー全員がいちばん納得できないのは、あんなに強いジャンボがなんでアメリカ行って勝てないんだっていうその疑問だね。まあジャンボがアメリカでもこれで2、3勝してくれてたら、やっぱりアメリカでも勝ってるジャンボが日本でも勝つんだから、それはもう当然だし、日本のゴルフ界もレベル的に認められるんだけどね。

 いかんせんジャンボがアメリカで勝ってない分だけ、日本では日本ではっていう、日本だけ特別な感じで見られる。ただこれ、おもしろいことが1つあるんだ。

 それはゴルフダイジェストブライアン・ワッツの「ワッツ・ニュー?」っていう連載があるんだ。僕ら職業柄って言ったらおかしいけど、ゴルフ雑誌はほとんど、たいがいの選手は見てる。その中でもおもしろいページっていうのがけっこうあって、ワッツのもおもしろいページの1つなんだ。

 で、彼がこないだミズノオープンで帰ってきた時に書いてたんだ。日米のいちばんの違いは芝だと。芝生が違うと。それに戸惑うっていうことを書いてたんだけど、僕がアメリカツアーに参戦してた時も、芝生の違いっていうことをよく言ってたんだ。

 当然ジャンボも言ってたんだけど、実際それは戸惑う。ボールとクラブが一緒でも、ボールが置かれる状況が違うんだね。どっちがやさしいかっていうと、一概にはどっちとも言えないところがあるんだ。


(1999.7.14掲載)

やさしいはずの高麗がやさしくない

 ワッツはその記事に、日本で何年かやって、日本の芝生がすごく楽だったと書いてるんだ。高麗芝で浮いてるような感じで、ティーアップを低めにしたような感じで楽だったっていうことを彼は書いてたんだ。

 で今年アメリカツアーに参戦して、アメリカのそのフェアウェイっていうかラフにいったボールは沈んでるように見えると。その中で半年間やってきて慣れてきて、こないだ日本に帰ってきてプレーしてみたら、あのやさしいと思ってた高麗芝のフェアウェイ、高麗芝のコースが、難しく感じるっていうことを彼が書いてる。

 この記事は先週号のゴルフダイジェストに載ってたんだけど、まったくそれはその通りだと思う。僕もアメリカでフェアウェイにピタッとボールがあって、要するにティーアップしてないようなボールを打ってきて日本に帰ってくると、やさしいはずの高麗がやさしくない。具体的にわかりやすく何が違うかっていうと、ボールの縦に対する距離感が出しにくい。

 これは、ティーアップしてるみたいだからやさしいじゃないかっていうふうに一般の方は思うと思うんだけど、高麗芝の上にあるボールというのは当然ティーアップしたように1本2本の上に乗ってるわけじゃないよね。高麗芝っていう、そのボールの下にある何十本もの葉っぱの芝生の強さに支えられてるわけだね。

 ということはボールとフェイス面の間にも当然その強い芝生が何本か入ってくるわけだね。これはわかるよね。1本の芝生の上に乗ってるわけじゃなくて何十本もの硬い芝生の上にボールが乗ってるわけだから、要するにボールは100%芝生の上に乗ってるわけじゃない。

 当然フェイスとボールの間に芝生が何本か入ってくる。それがベント芝だと非常にやわらかくて、そのフェイス面に対してのくっつきっていうものが、特にフェアウェイからはそれほど差を生まないんだ。要するに差が出ないんだよね。


(1999.7.15掲載)

なるほどそうでしょう

 今年のマスターズでレポートしたけど、セミラフと言えどもそんなに深くなかった。ラフと言えどもそんなに深くなかった。あの時、日本で言うとフェニックスのセミラフぐらいかなっていう話を書いたと思うんだけど、そのセミラフから打ってもアメリカのベントのようなやわらかい芝だと、上手に打てば止まるんだ。

 ところが日本の高麗芝っていうのは、例えばフライヤーをさせて距離を稼ぎたい、あるいはロングホールのセカンドでスプーンで距離を出したい、ロングアイアンで距離を出したい、そういう点ではプラスに作用するんだけど、グリーンのある一点で止めよう、そこに正確に距離を出していこうとすると、その芝生1本2本が強いためにフライヤーが起こりやすい。あるいはフライヤーをしなかったりする。

 だからプラスマイナスで言うと、例えばフェアウェイにボールがあったとして、芝生がフェイスとボールの間に、3本芝生が入ってきたら、距離は2、3ヤード違う。ということは2、3ヤードの差というのをコントロールしきれないで、回らなきゃいけない。だからワッツもそれを感じたはずなんだね。

 だからことフェアウェイからっていう状況、あるいはセミラフまでいれれば、明らかにベント芝のほうがやさしい。ただフライヤーをさせたい、あるいはそんなに深くないラフの場合はベントよりも高麗のほうがやさしい。

 だからワッツがアメリカツアーから帰ってきて芝が違うって言ったのは、そんなのはアメリカと日本で芝が違うのは当たり前じゃないかいうふうに読者のみんなは思うかも知れないけど、それはプロにとってはなるほどそうでしょうって思うことなんだよね。特に向こうを知ってるプロにとってはそれがよくわかるし、結局はその芝生の違い、それがいちばん難しいんだね。


(1999.7.16掲載)

フィールドの選択

 問題なのは、どっちの芝に慣れるかなんだ。例えば青木さんは洋芝に慣れていった。要するにベント芝に慣れていった。そしてアメリカツアーを主戦場にしていった。ところがジャンボは、高麗芝を主戦場に選んで、高麗芝のフィールドを彼は選んだわけだね。

 だからジャンボはアメリカに行けば困るわけだ。日本の高麗芝に合わせてるから、アメリカのベントの芝に行った場合に、これがまたいろいろ違うわけだね。だからどちらを自分が主として考えるか。そういうふうになってくる。

 でまた直道みたいに、基本的には高麗なんだけど、ベントもこなせる、ベントも自分の選択肢の中に入れてくる、そういう選手もいるんだけど、この場合は少なくとも高麗のフィーリングっていうのを体に残していくから、青木さんのように100%アメリカにはならない。

 だから直道君は日本に帰ってきた時によく勝つケースがあるよね。それはアメリカの中でも、必ず自分の体の中で高麗を忘れきってない、忘れないっていう感覚があるんだね。

 一般の社会の中で例えていうと、サラリーマンの人が、俺は英語しゃべりたいからっていって、会社の中で英語しゃべってたって、周りの人ちんぷんかんぷんだよね。まあそこまで極端じゃないけど、例えばその会社にパソコンがたくさんあるとして、Aさんは英語のソフトでそれを全部やると。でBさんCさんDさんその他全部の人は日本語のソフトでやる。そうなった場合、Aさんのパソコンは他の人には使いにくいわけだよね。

 そういう感じで、同じパソコンでありながら中身のソフトが違うというか、使い方が違うというかね。日本と海外の芝には、そういう感じの違いがちょっとあるね。


(1999.7.17掲載)

ほんとに景気悪くなるよ

 ちょっと前の話になるんだけど、あるトーナメントでこんなことがあったんだ。なんとその試合では練習場での練習ボール代を取るんだ。やっぱりプロの試合で、トーナメントで練習ボール代がかかるっていうのはねぇ。

 練習する時間の制限はまだいいや。みんな帰らなきゃいけない、あるいはそういう明日のための準備も必要だから、5時だったら5時、6時だったら6時までですよって言われるのはいい。でも練習するボールでお金を取ってはいけないんじゃないかなぁって気がするね。

 アメリカのトーナメントで練習ボール代を取ってるなんて試合は1つもない。で基本的に練習場が使える時間も日の出から日暮れまでだからね。日が出てから暗くなるまで。そのすごさっていうのは、何年やったら追いつくんだろうなって感じがあるね。すべてにおいて桁が違うっていうか、意気込みが違う。

 これはちょっと変なたとえだけど、向こうでは宝くじでさえも何十億円っていうのが当たるよね。日本でいまいちばん高いのが、1等前後賞あわせて3億円、たかが知れてるよね。アメリカってのは宝くじでも何十億とか30億とか40億とかいう宝くじがあるぐらいだから、そこにしてもやっぱり気合いが違ってるって気がするね。

 まあそれはともかく、早くほんとゴルフ業界のデフレ志向をなんとかしてもらいたいなっていうふうに気がする。例えば隣りのうちが景気悪いんだよねぇ景気悪いんだよねぇって言ってたり、もう町内全部が景気悪いんだ景気悪いって言っててごらん。ほんとに景気悪くなるよ。

 景気が悪くたって、まあぼちぼちうまくいきますよとか、いやぼちぼち明るい材料が見えてきたとか、いやぁ苦しいけどいまががんばりどこだとか、そういうふうに言うほうがいいと思うんだ。


(1999.7.18掲載)

ゴルフ界のデフレ

 ほんと、ここを乗り切らなくて一家の長としてやってけますかとか、そういう前向きなコメントをする町内と、いやぁ景気悪いよ、どっちを向いてもダメだダメだって言ってる町内と、どっちが発展すると思う。絶対に前向きなほうが発展するよね。

 それと同じようにゴルフ業界だって、いやぁ景気悪いよ、ゴルフ場でいえば償還期間がくる、トーナメント数が少なくなって、やあ選手の質が悪いよ、いやぁ何々が悪い何々が悪い、あれが悪いこれが悪いって言ってると、どんどん悪くなる。まさにゴルフ界のデフレだよ。

 なぜデフレが起こってるかって言えば指導者が悪い。日本だってそうだよね。ややデフレ傾向になってるわけじゃない。まあ少しいま底だけど。それを改革するには政府が事業を打ち出す必要があるよね、いろんな意味で。

 あのシティバンクなんてつぶれそうになった。そのシティバンクが徹底的に自分達の会社をリストラしてビジョンを発表して、リストラをしてこうしていくんだ、こういうふうにやっていくんだっていう、はっきりとディスクロージャーをして、やっていって、顧客に対してアピールして、そして顧客が戻ってきてくれたおかげでシティバンクはすごいグループになったわけだ。

 なぜ同じことがなんで日本政府ができないのか。日本のゴルフ界だってそうだよ。日本のゴルフ界だって、はっきりとしたビジョン、トーナメントに対してのビジョンを打ち出していけなかったら、デフレのまんまだね。それにはどうするか?

 島田幸作さんをはじめ、ポリシーボードではたくさんのいい意見が出てくる。そのビジョンに対して、賛同する気持ちがなければいけないよね。シティバンクだって、そのリストラに多くの社員が協力し、また多くの団体がそれを支えてきたわけじゃない。それと同じように、ツアーをサポートしてくれる人達が、ほんとにサポートする気がなかったらダメだよね。


(1999.7.19掲載)

そこがもう間違ってる

 ほんとにいろいろあるよねぇ。というのは、こないだあるゴルフ雑誌に書いてあったんだけど、まあけっこうお堅いほうのゴルフ雑誌なんだけどね。こんなことが書いてあったんだ。

 「今回のPGAとJGTOの内紛が誰に聞いてもよくわからない。新しいツアーはクォリファイトーナメントの改革案も発表したが、これもよくわからない。結局わかっているのは、従来のシステムならアマチュアとしてしか出場資格のなかったジャンボJr.の尾崎智春君が主催者推薦でプロとして出場することだけである。」っていうふうに書いてあるんだ。

 これはとんでもない間違いだよね。尾崎智春君はアマチュアとしては出場できなかったんだ。アマチュアとしてしか出場資格がなかったジャンボJr.って書いてあるんだけど、これを書いているその人は無知だよ。彼はアマチュアとして出れないんだから。だからもっともっとよく勉強しなさいって言いたいね。

 勉強してない人間に説明してわかんないって言われたって、どっちの責任かな。勉強してないほうが悪いよね。例えばよく小学校2年生ぐらいで九九をやるよね。九九をやっていない人間に九九の説明をしてもわからない。大人同士になって、お前九九でこれでって言ったら、俺九九やってないからわからないと。それはどっちが悪いかな。

 ゴルフ業界に生きてる人間だったら、勉強っていうよりも調べればわかるよね。だって発表してるんだから。その発表した資料は手元に入るわけだよね。それを見ればわかるはずなのに、それを見ないで物を云々言うからわかんなくなっちゃう。それはツアーの責任じゃなくて、改革した側、JGTOとPGAの内紛でもなんでもいいや、そこの内紛をしてる人達の悪さじゃなくて、それを勉強してない人達の悪さ、無知さ。

 だいたいなんで尾崎智春がアマチュアとしてしか出場できないなんていうことが書けるのか。ということはそこがもう間違ってるわけだね。だからそういう間違ってる人達がたくさんいるから、ますますゴルフはデフレになるんだ。


(1999.7.20掲載)

2001年までに

 智春をジャンボの親の七光で推薦で出してはいかんっていうような声が同業者のプロからあったりしたけど、推薦で出てる人っていうのは、実際問題智春だけじゃない。毎週数人出てる。

 例えば仙台の時には、トミーチャレンジなんかでも、あるいは他のミニツアーでも活躍してる早野君っていう研修生が出てたんだけど、やっぱりベテランって言われる人は、これ智春だけじゃなくて、若手が出てくる、あるいは研修生が出てくるっていうことに対して、もっとでかい気持ちを持たなきゃいけないんじゃないかな。

 だから彼だけじゃなくて、彼も含めてだけど、そこでブレイクするかも知れないよね。大ブレイクするかも知れない。そうなったらものすごくいいことだよね。まして智春なんかで言えば、ギャラリーが見たいと思う選手なんだしね。

 新しく変えた方向っていうのは、やっぱり民主主義の中で多数決で決めていったわけだから、認めんとか、後退というか否定的な意見っていうのはどうなのかなって思うんだ。僕はもうはっきりいってそういう後ろ向きな話には反対だね。

 ましてこれから先、ツアーの出場権の見直しとか、要するに出場順位、カテゴリとかいろんなことが2001年までに待ってるわけだね。なぜ2001年かというと、日本シリーズにはJTがスポンサーとしてついてるんだけど、日本シリーズにもやっぱり複数年シードがある。

 そのJTがJGTOではなく、PGAと契約をした、複数年シードの契約期間がまだ3年残ってるんだ。その3年というのは2001年が最終の年なんだけど、そこまではやっぱり契約が残ってるんで、あまり極端な出場順位の見直しっていうのは極端に言えばできないんだ


(1999.7.21掲載)

出場順位の見直し

 逆に言えば、2001ぐらいまでにほんとの意味で予選会も整備できるし、あるいはツアーもちょうどいくつか抜けたから、その試合を動かすということもできる。その日程調整のことも含めていろんな課題っていうのを均していくのにやっぱり2、3年かかるわけだね。今年立ち上げたからって、すぐ今年よくなる来年よくなるっていうわけにはいかない。

 やっぱりいままでの規約だとか法律上の問題もあるし、いろんな点を煮詰めて直していくのに、やっぱり2、3年かかる。そうなってくるとちょうど2001年ぐらいの時にいろんな意味で、選手の出場の優先順位の見直しとかそういうのも全部直していかなきゃいけない。

 その時にはやはり実力の社会なんだから、実力の順位に見合った出場順位にしていかなきゃいけない。これは僕の個人的な私見だけど、例えば名誉終身シードっていうのがあるよね。これが今は出場カテゴリのナンバー1にきてる。でもこれは、その時の実力ということから考えると、優先順位のトップは賞金王だと思うんだ。

 ツアーというのは実力が第一で、その次にツアーに対する貢献が考慮されるべきだと思うんだ。だから終身シードは順位を下げないといけない。例えば、15年がんばってシードを守ってきた、かたや2年ツアーに貢献してきた、この2人を同じ枠には置けよね。やはり前者のほうが保護が厚いべきだよね。ただ実力ということを考えると、順位は下げるほうがいい。その終身シードが、賞金ランキング60位以内というカテゴリの次にくるのか、主催者推薦のトップにくるのかとか、まだまだ考えていかないといけないけどね。

 それから複数年シードにしても、例えば日本オープンの10年シードは5年でいいと思う。よく、複数年シード持ってるから自分のこと考えなくていいなんて言われるけど、決してそんなことはないです。シード権安泰なんてことは思ってないです。

 でちょうどいいなぁと思ってるのは、ちょうど2001年までで僕の日本オープンの10年シードの資格が切れるんだ。その時に出場カテゴリの見直しが終わるとなると、そういう点に気を使わなくて済むよね。


(1999.7.22掲載)

問題はまだまだ山積み

 レギュラーツアーだけじゃなく、やはりベテランというのは、やっぱりシニアツアーをどう作っていくか、どう盛り上げていくかを考えていかないといけない。そうしないと生き残っていけない。

 若い人が魅力のあるツアーを作ってきたら、やっぱり距離で置いてかれたらシニアにいくしかないんだよね。その時にシニアが5、6試合じゃ困っちゃう。やはり年間20試合ぐらいほしいし、ないと困るよね。安田さんが、ジャンボをはじめ、シニアに出てこなきゃいけないって言ってるけど、これも長期で出ないといけないよね。

 あとはやっぱり主催者の協力も必要。練習場の整備、コースのフィールドをよくしないといけない。だから出やすいような日程に変える。または3年やったら変えられるようにするとか、そういうようないろんな調整をしなきゃいけない。

 ただ、まだ去年の申込のまま、要するにPGAとの契約のままやってるんで、そのあたりの話も含めて問題はまだまだ山積みだね。出場順位の見直しも含めてこれからがたいへん。違うレールに乗せてくれてといっても、予算だとかテレビ局だとか、いろんなことが重なっちゃう。動きたくない試合と動きたい試合があるけど、これをいまからやらないと、日程の調整、海外に通用する選手、よりエキサイティングな試合、こういうのが作っていけないよね。

 話はちょっと戻るんだけど、一昨日だったかな、智春について書いたよね。これについてもう少し書きます。ここんとこずっと新聞紙上をにぎわしてた智春の件についてなんだけど、一部のプロがジャンボの息子だからって出すのはどうなんだと言ってると。

 でジャンボはジャンボで、新ツアーになって、その恩恵を被れるのは智春1人じゃない、それよりもツアーの新しい方向に対して逆行するものだという意見を出してる、とまあそういう話があるよね。僕としては、それが、サッチーとミッチーみたいなあんな争いになってほしくないんだ。

 確かに100人いたら100人の意見があるわけだよ。100人いたら100人の意見があって、その中には、智春だから、ジャンボの息子だから出すのはおかしいって言う人もいると思う。それはある意味では理解できない話じゃないんだ。でも・・・この話、ちょっと続けます。


(1999.7.23掲載)

絶対それを活かそうとする

 まったく逆の立場から見てみよう。例えばスポンサー、トーナメントを開く側、あるいはゴルフファンになってみれば、全員じゃなくて一部のファンになってみれば、じゃあ智春のプレー見たいよっていう人がいるかも知れない。そういういるかも知れない人もいるし、いやそうじゃないんだっていう人もいるかも知れない。

 ツアーが新しい制度になって、去年の二次予選会にいった人達がツアーに出れるようになった。現実に智春だけじゃなくて、木村友栄君っていうのも出たし、東北ではその木村君と早野健君っていう、早野君は三次予選会までいった人だけど、実際に出てるよね。

 でも彼らはその話題にさえも乗らないわけだ。でも彼らだって、その新ツアーの恩恵を被ってる。その早野君はミニツアーにいろいろ出てる。うちのトミーチャレンジツアーにも出てる。で彼にその話を聞いてみたら、自分達はショットではそんなに気後れはしない、ショットではそんなに極端な差は感じないんだけど、グリーンの仕上がりがまったく違ってると言うんだね。

 そりゃそうだよね。普通のミニツアー、あるいは予選会にしてもそうだし、普通のいままでのテストでは味わったことがないほど、グリーンは硬くしまってくるわけだ。そういう締まってきたグリーンに対して、自分達がどう攻めていいかわからない。じゃあ彼らはそれだけでも、グリーンの硬さ、要するにツアーっていうのはこういうグリーンの硬さで仕上げてくるんだっていう、それを味わえただけでも、勉強できただけでも、それをプラスにすることができるわけだね。

 だってやったことのないグリーンの硬さでセカンド打ってく・・・これはすごい怖いことだよ。でもツアーっていうのはこういう硬さなんだっていうことがわかれば、彼らが今度の自分達のゴルフの経験の中で絶対それを活かそうとするわけだから、新ツアーの方針っていうのは、要するに智春だけじゃなくて、その推薦で出た人全員がその恩恵を被れるんだよね。そして、すべての人にチャンスが出てるわけだ。

 いまは二次まで行った人ってことになってるけど、僕個人としては、二次じゃなくていいんじゃないかなって気がする。一次でもいいんじゃないかなと思うんだ。


(1999.7.24掲載)

日本ではタイガーは出ない

 極端に言ったら、例えば西武の松坂投手がもしゴルフが上手だったとして、これは例えばの話だからね、彼がもし上手なゴルファーで、自分はプロゴルファーもやってみたいと言ったとする。アメリカのメジャースポーツ選手の中には、2つのスポーツを掛け持ちする選手がいるよね。

 それと同じように、もし松坂選手が手を上げて私は来週のトーナメントにプロとして出たいですって言った時に、じゃああなたは二次テスト受けたんですか?受けられてないんですか、じゃあ出れませんねっていうことなると、日本ではタイガー・ウッズは出ないわけだね。

 タイガーは、私は今からプロ宣言をしますと言ってトーナメントに出たわけじゃない。ジャスティン・ローズもそう、セルジオ・ガルシアもそう。要するに彼らは、日本風に言えば一次テストも出てないわけだ。なのにプロのトーナメントに出れた。こんなに新鮮なことがどこにある?

 要するに、自分はプロでやりたい、プロ宣言をする、でそれが非常に話題性のある選手、あるいは話題性があって実力がある選手だったら、スポンサーはぜひ今週からでもうちの試合に出てください、ゴルフファンは今週からプロでデビューするから見たい、そういうふうになってくるよね。テレビだって、彼が今週からプロとしてデビューするから放映したい。スポンサーも応援したい、こういうふうな図式になるよね。

 そこがアメリカツアーの素晴らしさであって、タイガーがプロ宣言してすぐ出れる。ここに最大のスピーディさがあるわけだね。時間的なスピーディさ。でも日本っていうのは、政策委員やってる僕が言うのも変だけど、二次テストまでいかなきゃトーナメントに出られない。

 それはなぜかと言えば、その人に一定の実力があるかどうか測るためだね。二次テストにいってるから彼は実力は問題ないでしょうということで出れると。そこらへんの近所のおじさんが、俺はプロだって宣言して、トーナメントにコネを使って出るのとわけが違う。

 逆に言えば、そういう人が出てきてもらっちゃ困るわけだ。極端に言えばハーフで50も切れない人がプロ宣言をしてコネを使って出てこられても困るわけだよね。だから二次テストを受けた人ってなってるわけだね。


(1999.7.25掲載)

1年と1カ月

 もし、推薦出場制度がもっともっと改革されて、プロの宣言をした人で、ツアーのコミッショナー、今でいう島田幸作さん、要するにエグゼクティブディレクター、あるいは現場のチーフディレクター、今は鈴木規夫さん日下さんの2人がディレクターやってるわけだけど、このディレクターの許可を受けた者でいいというふうになったら、もっとすごい人が出てくると思う。いますぐというふうには言わないけどね。

 その人のために、例えば高校でずっと野球をやってきて、肩を故障したり、どっか故障したり、あるいは故障しなくても、自分ゴルフやりたいとか、突拍子のない若者が出てくるかも知れない。でも今のシステムで言えば、二次予選会までいかなきゃいけないから、どこかで研修生をやらなきゃいけない。そして、どこかでテストを受ける。

 テストの一次から二次まで、何カ月っていうサイクルがあって、その何カ月間あるいは半年間を待たなきゃいけない。これはやっぱり、今の二次テストでさえも、僕としては改革しなきゃいけないと思う。せめて一次にしてくれっていうのが今の希望だね。

 僕の話をすると、僕個人としては1974年の11月にプロに転向しますっていう宣言をして、協会に書類を申請、そして1975年の5月の技術試験、プロゴルファーとしての技術試験に合格をした。それから半年の研修期間、6月から11月までの研修期間を過ごして、1975年の12月1日付けで書類審査が終わり、初めてプロとしてスタートできたわけだ。

 ということは1974年の11月にプロ宣言をして、プロ転向の意志を表明して、プロに合格して書類審査を通ったのが、次の年の1975年の12月1日ってことは1年と1カ月。1年と1カ月経ってようやく紙の上でプロになった。技術的には5月に合格したんだけど、書類の上では12月1日にプロになった。でもそこには試合がなかったんだ。


(1999.7.26掲載)

チャンスの扉

 12月にプロになって、それから試合があったのが翌年の4月。1976年の4月から試合が始まった。でも4月の試合には出られなかった。なぜ4月に出られなかったかっていうと、月例でポイントを稼がないといけなかったんだ。月例競技会っていうのがあって、月例競技会での順位によってポイントをいただける。そのポイント上位者がトーナメントに出れた。

 だから12月1日付けでプロになって、翌年1月2月3月の月例でポイントを稼いで、それを使えたのが5月のペプシトーナメント。ということは1年と6カ月、僕は試合に出られなかったわけだ。

 このシステムはずいぶん早くなるように改善されて、倉本がプロになった頃にはもっと早く試合に出られるようになってた。そういう変化が、協会でも早く、もっと早くいい選手を出そうもっと早くいい選手を出そうっていう動きがあった。でもどっちにしても、今の前のこのシステムに到達するのにもすごい時間がかかってるわけだね。

 もっともっとこれが開かれた扉、あるいはもっと数多いチャンスがある扉にしていかないといけない。扉に手を掛けるのはその人達自身になるけど、でも扉さえもないと、それはいけないと思う。研修生の諸君、あなたたちには扉はないですよ、これでいいと思う?

 プロテストを合格した研修生はいい。四次試験受けるんだから。でもプロテストに合格しないけど、ひょっとしたらそのまま埋もれてしまう有望な若手に、チャンスの扉の1枚でさえも作ってあげられなかったらどうすると。

 まあ、智春君の問題とは若干違うかも知れないけど、言い換えればジャンボがそれだけ偉大だからどうしても智春がそこで、そのことで注目を集めてるっていう矛盾っていうか、どうしても避けられない問題にあたってしまうわけだけれど、僕が言いたいのは智春だけじゃないんだよと。そういうチャンスの扉を開けられるのは彼だけじゃないんだ。

 だからそういうある一点のことだけ見つめて、全体を見つめられないような人間にならないでほしい。1つのことばかり追求して、全体が見えない。それはツアーにとって損なことだと思うね。


(1999.7.27掲載)

お詫びと訂正

 ずいぶん前なんだけど、マイク青木さんの記事を送ってくれた人がいたよね。おたよりコーナーではその記事の部分がカットされてるけど(苦笑) でその記事には、今年のマスターズで、ノーマンが12番ホールのグリーン奧のブッシュに入れて、みんなで探してたとき、僕が解説で、こういう捜索中にはボールを動かしてもノーペナルティだと言ったのは間違いだということが書いてあったのね。

 でこの件、ルール上の誤解をいろいろ招いたんで、正確な裁定を仰ぎました。これは複数のルールコミッティから、いろんな情報をもらっての正確なジャッジメントです。とりあえずこれ以上はUSGAR&Aしかありません。

 マスターズの12番ホール、ノーマンとリー・ジャンセンが一緒の組で回ってたよね。そのうちの、ノーマンとノーマンのキャディのトニー、この2人に限って言えば、捜索中にボールに触れて動かした場合はペナルティです。リー・ジャンセンとか、要するにその他の人が動かしてもそれはだいじょぶなんだけどね。

 ただアンプレアブルを宣言してれば、ボールを動かしたペナルティはありません。まああそこでアンプレアブルを宣言して、あそこのそばでドロップして、まあ2クラブレングス以内か後方線上か元の位置か、そのいずれかを選択したとしても、あそこを5で上がる可能性は少なかったと思うけどね。ただアンプレアブルを宣言をしたという情報はなかったんで、たぶんあそこで捜索してる全員がほとんどパニックに近い状態、非常に正常な状態じゃなかったのかも知れないね。それから見てる自分もそういう正確なルールを伝えられなかったということで、中嶋本人もけっこうパニックだったのかも知れません(苦笑)

 ここで改めて誤解を招いたすべての人達にお詫びと訂正をしときます。僕がノーペナルティと言ったのは、100%正しくはありませんでした。本人とキャディ以外の人が動かした場合はペナルティの対象にはなりませんが、本人とキャディが動かした場合にはペナルティの対象になりますということで、お詫びと訂正とつけ加えておきます。

 これね、JGAのほうにもいくつか問い合わせがあったらしくて、まあ中嶋プロは同伴競技者に動かされた場合に限りノーペナルティということを言われたんでしょうという判断をされたらしいんだけど、僕のコメントはどう見ても、局外者っていう言い方はしてないんで、非常に誤解といろんな誤解を招いたと思うんで、お詫びして訂正しますということで。深く反省いたしまーすということで(苦笑)


(1999.7.28掲載)

こんなことがあった

 もうちょっとルールの話をしようかな。マスターズの12番の時、みんなして、もうすごい勢いで探してたよね。あの時、捜索中に球を動かしても確かノーペナルティだっていうのが頭の中にあったことはあったんだ。

 その元々の発想は、僕が同伴競技者のボールを探してる時に動かしちゃったら悪いなと、それはペナルティなのかなと思ったところから始まった問題で、自分で不思議に思ったことがあったんだ。探すったって注意して探さなきゃなと。でもそれを調べた後は、あっ動かしてもノーペナルティなんだからどんどん探せってことで探してあげられるようになった。

 ただ、どっかで・・・イギリスかどっかで、確か全英に出たときに、こういうのを見たことがあるんだ。一緒に回ってた選手が、それこそ潅木っていうかブッシュの中に打ち込んで、球が見つからないわけ。で、ずっとみんなで探してて、当然競技委員も来たりしたんだけど、彼があったって言うんだよね。

 ブッシュの中で見つかった時、足に当たったわけだね。足に当たってあったってことは動いてるわけだよね。あった、足下見て、要するに手応えがあった、足応えがあったんだから、それであったって言ったら当然それは足に当たって、球は動いてるわけでしょ。

 でもそれをノーペナルティでそのままプレーしてった。ノーペナルティっていうか、あたかもそのままプレーするのが当たり前のように、動いたからペナルティだとか、そういう会話すらないし、あぁよかったよかった、ぽーんと打ってって、競技委員もよかったね、じゃあここからがんばってくれよって感じで、そのままノーペナルティでいったのがあったんだ。


(1999.7.29掲載)

よりしろ、クッション

 昨日書いた全英での話が頭にあって、その記憶もあったから、当然あのマスターズでのノーマンのケースでは、例えば動いたとしてもノーペナルティなのかなという気もちょっとしてたんだ。だから、ちょうどいい機会だったし、僕もこれもう1回確認してみたかったんだ。

 JGAに聞けばはっきりわかるわけだし、なんだったらR&Aまでいってみようかと思ってたんだよね。今回きちんと裁定を仰いで、お詫びと訂正ができてよかった(苦笑)

 だけどはっきりいって裁定っていうのはまちまちだよね。例えばノーマンがジャンボにアピールした問題があるよね。ドライバーでラフを押さえるな、まぎらわしい行為をするなと彼は言ってたわけだ。

 だけど、じゃああれがはたしてアメリカのツアーだったら、PGAツアーだったらペナルティを取られるかも知れない。僕の予想では取られると思う。ということは、同じ世界共通のルールでありながら、日本ではノーペナルティであり、片方ではペナルティだということだよね。

 日本ではペナルティがつけられないのに、アメリカでは、まあノーマンのアピールの件で言えば2ペナルティになる可能性がある。要するに裁定っていうのは人間がするわけだから、まったく裁判所と同じように、ある裁判官は情状酌量を取るかも知れないし、ある裁判官は情状酌量を取らないかも知れない。

 だからルールって、灰色の部分っていうのは言い方はおかしいけど、要するによりしろ、クッション、そういうような部分っていうのがルールにはあるんだよね。杓子定規には考えない。


(1999.7.30掲載)

ノーって言われるだろうなぁ

 ルールというと、公正の理念っていう言葉が、最終的には出てくる。そういう場合には“公正の理念に従って”という言葉が入ってくるよね。だからあのマスターズのケースで、あれだけの捜索活動だよ。すごい捜索だったよね。それこそ競技委員も含めて全員がすごい勢いで探してた。

 その中で、ボールが1センチ2センチ動いたからってペナルティを取るっていうのも、公正の理念というふうに考えるとどうかなっていう気もするね。同じルールでありながら、そのときどきの状況によって、若干の変化があるっていうのが、すっごく不思議でありおもしろいなって思うんだ。

 そういえば全英オープンに行って、こんなことがあった。セントアンドリュースの13番で、ティーショットをばーんと打って、ちょうど260〜270ヤード先から段になるんだ。その段の手前にボールが2つ止まったんだ。僕と同伴競技者のボールが。2人の球はくっついてて、ほとんどもう2歩ぐらいしか離れてない。

 でこれがライが悪いんだ。ライが悪い。いやぁライが悪いなぁ〜これなぁ。なんて思ってたんだけど、その周りにちょっとアリ塚があったんだ。ほんとに気にしなければいいよっていうぐらいのアリ塚があった。

 そうしたら同伴競技者が、あっこれはアニマル、要するに動物が作った障害物だと。だから救済されると。日本人的感覚で言うと、競技委員からこれぐらいはノーって言われるだろうなぁ、どうなんだろうなぁって思ってたのね。できれば自分も、ちょっとお互い2人ともライが悪いから動かしたいなぁってな感じはあったんだ。

 で競技委員がじーと見て、OK」と。ってことは一人一人の感性っていうのが、非常にルールの中にも大きく入ってくるんだなっていうのがあるわけだね。ルールの話書いてて、そういう笑い話も思い出したね。


(1999.7.31掲載)

断固としてノー

 あとルールの話でおもしろかったのは、世界マッチプレーだったかなぁ・・・ヨーロピアン選手権だ。ヨーロピアン選手権がでウェントワースであった時に、同伴競技者、これ、どこの選手だか忘れたけど、打ったボールがブッシュ入ったんだ。後半のインコースの何番かで、ブッシュに入って、とてもスイングできるような感じじゃなかった。

 とてもスイングできる状態じゃないのに、ボールとピンを結ぶ延長線上にテレビ中継塔があると。だからこれはドロップできるんだって言うんだ。でさすがに競技委員も、ここはスイングできないだろうって言って、横に出すしかないだろう、どうやったらお前あれがジャマになるんだって言ったんだけど、いや俺は打つと言い張るんだね。

 俺は打つって言ったって、誰がどう見たって打てないだろう、いや打つ、打つからジャマなんだ・・・というようなやり取りがあって、結局どうしたと思う? 救済が認められたんだ(笑)

 こんなこともあった。昔ジャック・ニクラスが全英オープンに出た時に、ピンとボールを結ぶ線上には障害物はなかったんだけど、すっごい強風が吹いてたんだ。その風を考えると、テレビ塔かなんか、放送施設がジャマになるんだね。

 どうやったってその風だと、その放送施設がジャマだと言ってるのに、その時の競技委員、確かダンカンって言ったかな、確か有名な競技委員だったんだけど、この人が断固としてノーと言ったんだ。断固としてノーと言ってゆずらない。

 ピンとの延長線上に何もないけれど、確かにすごいスライス風かなんかで、全英オープンだから半端じゃないと。そこ狙っていくと放送施設があると。だから動かせて、これは救済されるべきだってニクラスが言った時に、救済は延長線上だからノーだと言われた。スイングはできるのに。

 前者はスイングができないのに、延長線上に障害物があるから動かしていい、ニクラスはスイングできるのにダメと。どう思うこれ?(苦笑) だからほんとに人間の決めることっていうのははっきりしないよねぇ。